少し高い世界では

ぼっちマック競技勢 KKG所属

背伸びをして見えた現実

 あれは私が小学校3年か4年の頃です。


 私は休日に父が昼寝している間、暇つぶしにゲームをしていました。当時はスマホなんか持っていなかったので、父親のスマホをこっそり盗みトイレに隠れてゲームをしていたんです。


 ハラハラドキドキしながら毎度毎度犯行に及んでいたのですが、たまに誰かからメッセージが来るんですね。


 いつもは気にせずゲームを続けます。メッセージのアドレス先がいっつも母で、大して興味をそそられないからです。


 だけれどその日は見慣れない名前の人からメッセージが来て。しかもメッセージの内容の中にハートの絵文字、とか大好き、みたいな禁句が含まれてたんです。


 母以外の人からですよ。


 浮気とか不倫とかそういう概念はその頃にはもう理解し始めてましたし、それを見た時、何があったかはもう薄々察していたんです。


 そこで引き返していればまだ傷つくことはまだありませんでした。だって父は裏切っていないと自分を慰めることは可能でしたから。


 もしかしたら、もしかしたらと言っていろんな可能性を模索して、何週間かしたらそんな嫌なこと忘れてしまうはずです。


 だけれど僕は気になってしまった。


 父は裏切っていないと確証を持ちたくてその人のトーク履歴を開いて過去の内容を見たんです。


 真実を知りたいってカッコつけて、背伸びしたんです。


 そしたら、まぁ。色々な証拠があったんですね。


 会話の内容もそれはそれはアツアツなカップルと見間違うほどのものでしたし、相手も子持ちでした。両方とも相手が子持ちだと知って、不倫してました。


 休日には遊びに付き合ってくれて自分のことを抱きしめてくれる父は、私の味方だと思ってました。たとえ世界が私の敵になっても父と母だけは助けてくれると。


 友達の少ない私にとって家族は大事な心の拠り所です。


 無条件に信頼をおいていい唯一の相手でした。


 だけど、それも過去の話。その時は頭が真っ白になって、そしてガタガタと土台が崩れていく音がしました。


 それがとても怖くて、だけれどもう逃げられなくて。

 私は周りの人が全員敵に見えるようになりました。だれも信じられない。


 父も、母も。

 私も。


 この日、小学生にとっては重すぎる現実を背中に背負うことになり、自己嫌悪を常時持つ鬱人間になりました。


 これから話すのは、私が出会った人やものたちの話です。私があって、助けてもらったものやこの暗くてそこの見えない沼から助け出してくれた人の話です。


 今では、もう私はその沼から抜け出せました。


 でも、沼自体は以前と存在し続けています。父は不倫をしているし、母はそれを知りません。多分。僕は誰にも事実を伝えておらず何一つ問題は解決してません。


 今の私はどうすべきか、それは私にはわかりません。ただ、助けられてもう辛くないということはどうしようもない事実で、一番大切なことだと思います。


 私の来歴と言い訳をここからつらつらと描くつもりです。もしよければお付き合いください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る