グエン・チ・ホアの素敵な商売-The 2nd guest-
大竹久和
プロローグ
プロローグ
一年365日のほぼ全ての日々に於いて、朝から晩まで絶え間無く雨が降り続ける事で知られる街、常雨都市フォルモサ。そんなフォルモサの街の住人であるこの僕は、今朝もまたそぼ降る雨が奏でる雨音に鼓膜を
「出た!
すると同じリビングダイニングのリビング側の方角からそう言った声が聞こえて来たので、熱々の
「なあ、千糸? お前、もう自分の分の朝ご飯は食べ終わったのか? もし未だなんだったら、今から食べ始めてたら学校に遅れるぞ?」
僕はパジャマ姿のままそう言って千糸に問い掛けたが、すっかりテレビに夢中になってしまっている彼女は兄であるこの僕の言葉を無視するばかりで、返事なんてしやしない。
「さあ、願いを言え。どんな願いも、一つだけ叶えてやろう」
するとそんな不甲斐無い兄であるこの僕を真似た訳ではないものの、液晶テレビの中の
「こいつら馬鹿ばっかし! 悟空を生き返らせないで、
しかしながら次の瞬間、間髪を容れずに千糸がそう言って、
「ね、ねえ…あ…あの……サイヤ人…ってのをやっつけて地球を救ってほしい…って願いは駄…駄目かなやっぱり……」
とは言え千糸が考え付く程度の事は誰でも考え付くもので、液晶テレビの中の豚人間のウーロンもまたそう言って、サイヤ人達の撃退を
「それは無理な願いだ…私は神によって生み出された。従って、神の力を越える願いは叶えられん」
そして豚人間のウーロンの提案がそう言った
「ほらな、千糸。分不相応に欲を掻いた願いってのは、決して叶えてもらえないもんなんだよ」
「うるさいうるさい! お兄ちゃんの馬鹿! 不細工! 低能! ニート! お兄ちゃんなんかSNSで炎上してネットで顔写真と個人情報を晒されて、鬱病になって自分の部屋から一生出て来るな!」
すると嘲笑された千糸はそう言って憤慨しながら僕を罵倒するものの、実の兄に対して散々な言い様であると同時に、彼女が発する罵倒の言葉は小学一年生にしては語彙が豊富で表現が具体的である。
「ちょっと
そんなこんなで妹に罵倒されながら朝食である
「え? あ、もうこんな時間か!」
はっと我に返りながらそう言った僕は大急ぎで
「行って来ます」
そう言って自宅の玄関扉を潜った僕は傘を差しながら、氷雨に濡れるフォルモサの街の真冬の外気にその身を晒し、今度は街の反対側の学校の方角へと足を向けた。そして同じ学校に通う学友達と足並みを揃えつつ、今朝もまた、国立南天大学付属高等学校の正門を目指して通学路を歩き続ける。
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