第10話「あ飲んじゃった。」

 あれから私はふたりに回されている。


「とぅも、こっち向け」


「はい」


 なんか硬い。甘い。イチゴ味か。


「とぅも、あたしの方に向いて」


「はい」


 キスする瞬間、あきは囁く。(あたしはゆぅかよりとぅもの方が好きだよ。優しいから……)


「ゴクン、あ飲んじゃった」


「とぅも、あきに飴玉贈った?」


「いや──飲んだ」


「なにーもう一回っ」


 ゆぅかは私に口移しで飴玉を運搬させるつもりだ。


 また入って来た。硬いな。甘いみかん味だ。次こそちゃんと贈るぞー。


(とぅも、あたしの唇はお前にしか触れさせない)


 ゴクン


「飲んじゃった」


「なにー!」


「いやだってあきがあんなこと(ささやくから)……」


(しー)あきは話すなとジェスチャーする。


「もう一回。ちゃんと運ぶまで続けるぞー」


(とぅもが足つって運んだ時、あたしの心臓の音が『ハ・ゲ・シ』かったよ)


「あ、飲んじゃった」

「なにー」


(ゆぅかにナイショで付き合おうよ?)


「あ、飲んじゃった」

「なにー」


(もっとふたりだけてイイコトしよう)


 私は七つの味を体感してしまった。


「結局、渡せなかったじゃないかーもう」


 あきが妖しい悪女になった。

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