第7話「ゆぅかは+10センチをやり遂げた。」

「やったー」

「やり遂げたー」

「ガンバったねふたりとも」


「それではあき。ココに立って、特訓の成果を発表します」

「見届けます」私は言った。

「えっえ?」あきは理解出来ないよ? という顔。


 あきは黙って立っている。


 あきと私の身長差は10センチ。


 私とゆぅかの身長差は10センチ。


 私は+10センチの特訓をやり遂げた。


 ゆぅかも+10センチの特訓をやり遂げた。


 身長10センチ差、口の高さも10センチ差。


 ゆぅかがものすごくガンバってつま先立ちしても+10センチ差。


「あれ?」とゆぅか。

「あれ?」と私。

「なに?」とあき。


「届かないんだ──」


 よぉく考えてみよう。


 あきが立っています。


 隣でゆぅかがガンバって、つま先立ちしています。


 それでもキスは出来ません。


「なぜ?」とゆぅか。

「しまった」と私。

「なになに?」とあき。


 あきとゆぅかの身長差は+20センチ。努力したのは+10センチまで……。


 私もゆぅかも、ガンバレば叶うと思ってた。


「どうしたの?」蚊帳の外のあき。


 あきは、つま先立ちでプルプルしているゆぅかに尋ねてくれた。


「キッスしたいです──」


「ああ──はい」あきは、ゆぅかの額にキスをした。


「ふぃゃー恥ずかしいー」


 ゆぅかは、額を両手で隠して一目散に逃げ出した。


 あとに残ったのは、私とあき。


「とぅも、理由わけを教えて?」


 私はあきに全てを告げた。

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