カクコン10【短編】複数応募キャンペーン第3回「つま先」

三雲貴生

第1話「ゆぅかはとぅもに相談する。」


「これは大切な話なの」


 ゆぅかは私に話しかけて来た。


 ゆぅかは私の親友だ。赤茶色の髪にまん丸な瞳。髪の毛はボサボサなのに、瞳はランランと輝いている。今日は、アニメプリントの白シャツに、黒いサロペットをはいている。


「聞こうか」


「とぅもは身長何センチ?」


 とぅもとは私の事。ほんとの名前はトモなのだが、本名ユカの舌っ足らずな発音でそうなってしまう……らしい。


「160センチたけど?」


「わたしは150センチ。10センチ差だわ。あきは170センチって言ってたから10センチ差っ──」


 ゆぅかがひとりでブツブツ呟いている間に、あきについても説明しておこう。


 あきは本名あき。私たちは仲良し三人組女子。いつも一緒なのだが、今日はバスケの練習で別行動だ。


「あぅきとは呼ばないのな?」


「もう、脱線しないでよ。身長差が合わせて20センチ差なのよ、これ重要な案件っ」


「とぅも呼びは、重要じゃないと?」


「それはわりとどうでもいいわ。ところで、昨日、わたしはあきとキスしたんだけど……」


「──女子同士で? なんで、どうしてそうなった?」


「どうでもいいわ。わたしがあきにキスしたくなったからよ」


 重要案件が目白押しだったが、ゆぅかの会話では短編の尺がなくなりそうなので、要約すると。


 昨日、あきの所属するバスケ倶楽部で試合があった。得点王のあきが恰好よくて、ゆぅかは勢い余ってキスしようとしたが、あきとゆぅかは身長差が20センチ。ゆぅかのキスは頭突きとなってあきに直撃した。


 体の割に気の小さなあきは、ゆぅかが怒ったと勘違いして落ち込んでしまい。今、ふたりは不仲らしい。


「だ・か・ら」ゆぅかは、階段のへりつま先立ちの筋トレカーフレイズしている。身長150センチのゆぅかがやると可愛い。


「こうやって、鍛・え・て・る・の」


 突然、ゆぅかがトレーニングを辞めて、こっちをじーっと見る。


「どうしたの?」


「とぅももやるの!」


「なんで?」


「10センチ足す10センチは20センチだからよ!」


「わからん。けど、付き合うよ」


 この日から、ゆぅかと私は、毎日カーフレイズする事にした。

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