星を喪くした者たち

まさか からだ

第1話 星喪いの兆し

 星野光(ほしの ひかる)は、都会の片隅で細々と活動するフリーライター。

 ある日、匿名のクライアントから一通のメールが届く。件名は「星を喪くす病」。

内容は、「私は自分の星座を忘れてしまった。それによって人生が崩壊しつつある。真相を突き止めてほしい」という奇妙な依頼だった。


 クライアントが添付した写真には、腕に奇妙な痣のような模様が浮かび上がっている様子が映されている。その模様は星座のように見えたが、どの星座にも一致しない。

 「迷信かもしれないが、興味深い」と感じた光は、取材を引き受けることにする。




 取材を進めるうち、光は街で同様の異変を訴える人々に遭遇する。


 会社員の男性は「自分の誕生日を思い出せなくなった」と語る。

 主婦の女性は「星座占いを見ても、自分の星座が何かわからない」と訴える。

 学生の少女は、「夜空を見ても星がまったく見えない」と話す。

 奇妙な共通点を持つ彼らは、日常生活に支障をきたしており、次第に精神的にも不安定になっていた。彼らを結びつける唯一のキーワードは「星座」だった。


 光は、これが単なる都市伝説ではなく、現実の現象である可能性を疑い始める。




 手がかりを探して歩き回る中、光は偶然「星の館」という看板を見つける。古びた外観のその書店は、通りから少し外れた路地にひっそりと佇んでいた。


 店内には、星座や天文学に関する古書が並び、独特な空気が漂っている。そこで光は店主のルナという若い女性と出会う。

 ルナは、星座や星にまつわる伝説や謎について深い知識を持ち、「星喪い」の話にも詳しかった。


 「星座の記憶が失われている。それは人間の記憶だけでなく、星座そのものが夜空から消えつつあるということ」とルナは語る。

 さらに、星喪いの現象は単なる偶然ではなく、誰かの意図によって引き起こされている可能性があると示唆する。




 話を聞くうちに、光は自分自身の星座をすぐに思い出せないことに気付く。

 彼は、自分の誕生日や星座に関する記憶が曖昧になっている感覚に襲われる。


 ルナの手助けを借りて自分の星座を確認しようとするが、星占いの書物や星図にも手がかりがない。

 この瞬間、光は星喪い現象が自分自身にも迫りつつあることを確信し、恐怖を感じる。




 ルナは光に、古代の星図が描かれた一冊の本を見せる。

 その星図には、現在の星座には存在しない「失われた星座」の記録が記されている。

 さらに、その星座が消えた理由については「記憶の霧によって」との記述があった。


 ルナは、「この記憶の霧」という概念が、何者かによって意図的に作り出された可能性を指摘する。

 「星喪い現象は自然なものではなく、科学技術や未知の力が関与しているかもしれない」と語るルナに、光はさらに深い謎へと引き込まれる。




 光は、星喪い現象の真相を突き止めるために、ルナと共に動き出す決意をする。

 彼自身の星座の記憶を取り戻すことが、全ての謎を解く鍵になると感じ始める。


 夜空に輝く星々が、彼に静かに問いかけているようだった。

「君の星は、どこへ消えたのか?」

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