第23話 選択肢(後編)
お姉さんの御一家は無事にご自宅へ帰って行った。
見送ってリビングに戻ると、二人きりになって……賑やかだった分だけ変にしんとしてるから「お昼寝布団の片付け手伝うよ」ってタツキに言おうとしたら、振り向いた途端抱きしめられて息を呑んでた。
突然のことだったからドキドキしたけど、タツキの腕は緩まらない。
「ど……どうしたの」
「一崎が目の前で泣いたの思い出してた……」
だってお姉さんって知らなかったし。
もう今では恥ずかしい話題に真っ赤になったけど、少しだけ体が離れると背が高くて顔の良いメガネの課長と見つめあってた。
「俺が好きなのは一崎蓮花だけ。だから浮気なんて絶対にしない」
課長が久しぶりに乙女ゲーしてくるから、心臓バクバクになってく。
真剣な上司の腕の中で息も出来ずにいると、熱くなった耳とほっぺをタツキの指で撫でられてビクついてた。
「彼女は一崎しかいないし、好きなのも、こうして一緒にいたいのも一崎だけ。
……疑わせてごめん」
甘い言葉囁かれながらごめんなさいのキスされちゃうと、目が回りそうになる。
一回だけじゃなくて、唇が離れても見つめたらまたキスしてくれるから、ドキドキして上手く呼吸が出来ない。
タツキは本気で私のこと好きなんだって、触れ合うたびに心にも体にも浸透してく気がする。
キスの回数重ねると頭がぼーっとしてきちゃって、夢中でチュッチュって吸いあってた口が離れると、ちょっと色っぽく見えるタツキが微笑んでた。
「あんな顔して泣かせたお詫びさせて。何がいい?」
恥ずかしくて言えない。
だってこの雰囲気だと、キスしてそのままベッドに行く流れではないでしょうか、ボス。
「んっ」
口閉ざしてる合間にも濃厚なキスが何度も続くから、体が溶けてくる。
繰り返すたび少しずつ深くなってたけど、ついに舌が入り始めたのが気持ちよくて、自分でも絡めながら興奮してた。
タツキの服を何度か引くと、勇気出して背の高い彼氏を見上げる。
「タツキと、リアルでもSTP消費したい……」
選ぶの分かってただろうから嬉しそうに笑うなって思うのに、タツキに手を引かれてそのまま寝室に移動してた。
セミダブルのベッドに仰向けに寝転んだら、覆い被さるタツキに私からもハグして……夢中になって唇を求め合ってた。
「タツキ、っちゅ、タツキ……っ」
服脱がされて、出てきた肌にもいっぱいキスされる。
優しい愛撫のたびに、タツキがどれだけ私を好きでいるのか伝わってくる気がした。
不安になった分だけ、タツキはたっぷり愛してくれた。
お互いに満足したあとはシーツ変えたり、お昼寝布団のお片付けして、ご飯一緒に食べたら動画タイムスタートだ。
でも……楽しい時間なんて、あっという間。
ソファで一緒に座っておしゃべりもしてたけど、携帯端末にお知らせが出たから『長居してる』って気付いて慌てて立ち上がった。
「ごめんタツキ、もう七時になっちゃったね。
遅くなる前にそろそろ帰るね」
いつもの解散時間よりずっと遅いし、タツキもログインしたいだろうから帰らなきゃ。
イチャイチャの真っ最中だったせいで変に寂しいけど立ち上がると、タツキも気づいたみたいで自分の携帯端末見て考えてる。
「また後で、ゲームでね。
今日はダンジョン探索行きたいから前衛よろです」
普通ならもうデートはおしまいだけど、私たちはゲームで会える。
玄関に行こうと歩き出すと、立ち上がったタツキに手を掴まれて腰を引き寄せられてた。
驚く間にタツキが抱きしめてくるから、息を呑んで腕の中に捕まえられてる。
「もう暗くなってるし。
一崎、今日は泊まって行かない?」
「え」
「足りないものはコンビニで揃えて、ホテル泊まるくらいの感覚で。
……土曜だし、今日はそばにいて」
今日はそばにいて!?
不意のお泊まりを誘われて、バックハグなんてしてくるタツキの腕の中で心臓バクバクになってる。
リアルでSTP消費したから今日はもうないかもだけど、タツキと一緒に寝るんだって思うだけでもちょっと緊張する。
お酒の時は前後不覚だったからノーカウントだけど、寝相変だったらどうしよう。
「あ、でも11Gシート持ってきてないよ」
「一枚あげる。……他に帰りたい理由は?」
「帰りたいわけじゃないけど……お泊まりしていいのかなって」
「ご両親に聞かれるのが心配なら、一崎とは『同棲も視野に入れてるから今日はお試し』ってことにして」
同棲!?
恋人同士の仲が深まると、一緒に住みながらパートナーとして過ごすとは聞いたことがある。
結婚して戸籍入れてから離婚は大変だから、事前に生活リズム確認するとかなんとか漫画で見た気がする。
突然の、でも真面目に結婚考えてくれてそうなタツキならありえる話にドキドキしながら、腕が「帰さない」って言いそうなくらいぎゅっと抱きしめてくるのを感じてた。
……今日のタツキは私と離れたくないんだって、次はどう反論するか待ってるので分かる。
正直私も離れがたくて、一緒にいてもいいかなって揺らいでた。
だから……恥ずかしいけど彼氏の腕の中にもたれかかった。
「じゃあ泊まる。
……私も今日はタツキと一緒にいたいな。迷惑じゃないなら泊まらせて」
「迷惑なんて思うわけない。嬉しい」
言葉通り嬉しそうに抱きしめてくるタツキに甘えて、このあとはいつも行くらしいお店へ買い物に行った。
会社近いし誰かに見つかったらどうしようってちょっとだけ思ったけど、暗いからか知り合いもいないし声も掛けられずに完了した。
お風呂も入ったし、歯磨きもして寝る準備を整えたら、タツキのセミダブルベッドにご一緒してゲームログインして楽しく過ごす。
強制ログアウトで出たけど、目の前は自分の部屋じゃない。
深夜なのにタツキの部屋にいるって感動してたら、隣でタツキもシート剥がしながら笑ってた。
「終わってもミツハが隣にいるのいいな」
私だって同じ気持ちだって、お家デート誘ってくれたタツキとの時間に思ってた。
こうして、土曜にデートするときはお泊まりセットを持参することも増えた。
年末のサークル対抗PVP戦も近づいてきたし合宿だって言い訳しながら、でもタツキとのイチャイチャが楽しくて、そばにいるのが幸せに思ってた。
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