第10話 遊びは嫌?
アキナと朝、待ち合わせ。僕はレンタカーでアキナを待ち合わせ場所まで迎えに行った。アキナが『デートはドライブがいい』と言ったからだ。僕は、大阪市内に帰って来たときに車を手放していた。維持費がしんどいからだった。車の維持費をデート代に回していたようなものだった。
アキナは黄色を基調としたコーディネートで、いつもよりも更に美しく見えた。アキナは目鼻立ちがハッキリしている美人だった。背は165センチ。細いのにEカップの胸は服の下から自己主張している。さすが、元モデル。ちなみに、指名写真には29歳と書いてあったが、本当は32歳(今年33歳になる)とのことだった。まあ、僕はアキナが何歳でも構わない。
琵琶湖の湖岸を1周することにした。湖が綺麗だった。天気も良く、僕のテンションは次第に上がっていく。
僕は最初の仕事の都合で、滋賀県の北部に4年ほど住んでいたことがある。湖岸1周だったら、僕の土俵だ。美味いレストランも、ホテルも知っている。
湖を眺めて車を走らせ、まずは雰囲気の良い(女性に人気がある)イタリアン・レストランでランチのフルコース。僕は運転するから飲めないが、アキナには適量のワイン。
「これから行きたいところ、ある?」
「崔君の好きなところでええよ」
「僕に決めさせたら、行き先が決まってしまうで」
「ええよ、私、今日はそのつもりで来たから」
話が早くて助かった。
僕達は湖岸のホテルで結ばれた。お店は本番禁止なので、アキナと結ばれたのはこれが初めてだった。アキナとの相性は良かったと思う。僕は大満足でアキナに腕で抱き締めながら余韻に浸った。
「これで、僕はアキナさんの恋人になれたんかなぁ?」
「アカンよ・・・恋人にはできへん」
「なんで?」
「そもそも私、風俗嬢やで。恋人にしたいと思う?」
「思う。風俗は仕事やろ? わかってるよ、仕事は仕事。僕の最初の彼女も風俗嬢やったし」
「ふーん、風俗に理解があるんやなぁ、でも、アカンねん。恋人は無理やねん」
「なんで?」
「私、金持ちの愛人もやってるねん」
「愛人? そうなんやぁ・・・」
「『愛人』って聞いても、驚かへんねんなぁ、そこ、もっと驚くところやで」
「へ? だって、知り合いの女性に何人か愛人やってる人達がいるから。愛人って聞いても、『ふーん、そうかぁ』って思うだけや」
「まあ、ええけど。そういうわけで、崔君と頻繁に会うことは難しいねん」
「なんで? 愛人はアキナが風俗嬢をやってることは知ってるんやろ?」
「うん。そもそも、この仕事で出逢った愛人やから。でも、愛人のオッサンは、ビジネスプレイには何も言わへんけど、私がプライベートで恋人を作るのは許してくれへんねん。要するに、お店は本番は無しやろ? 私と本番するのは自分だけって思いたいんやと思うけど」
「頻繁に会われへんって、どのくらいのペースやったら会えるん?」
「うーん、そやなぁ、月に1回か2ヶ月に1回か? くらい。それでも、今の私の精一杯やで。それ以上を求められたら、もう崔君とデートできへんわ」
「月イチか、2ヶ月に1回? ああ・・・まあ、しゃあないかぁ・・・」
「その代わり、他の女の子を指名してもええから」
「また、それかよ!」
「また?」
「いやいや、こっちの話。で? その愛人さんはイケメンなん?」
「ううん、ブサイク。かなりキツイ。でも、めっちゃ金持ち。2LDKのマンションの家賃を払ってくれるし、お小遣いも結構貰ってるねん。私、事情があってお金が必要やから、今は、嫌やけど嫌な相手の愛人でも我慢せなアカンねん」
「そうか・・・」
「今、何を考えてる?」
「今度は誰を指名しようかなぁって」
「ミナミちゃんにしたら? ミナミちゃんって知ってる?」
「うん、指名写真で見た記憶がある。アキナさんを指名する時に、どっちにしようか迷ったから印象に残ってる」
「ほな、どうせならミナミちゃんを指名してあげて。私、ちょっとミナミちゃんに借りがあるねん。それに、私、ミナミちゃんと仲がええから」
「わかった、ほな、そうする」
「たまには私も指名してや」
「うん」
「たまには、しのぶさんも指名してるんやろ?」
「筒抜けか?」
「うふふ、結構、筒抜けかも。しのぶさんが、『いかに崔君がええお客さんか?』熱く語ってたわ。待機所で。で、私を指名し始めたやんか、今はみんなが私のことを羨ましがってるねん。今度はミナミちゃんが羨ましがられることになるやろね」
「僕のどこが『ええお客さん』なん?」
「全力で女性を喜ばせようとするから。プレイ無しで食事とか、プレイ中も全力やしね。自分が楽しむよりも、相手を楽しませよう、喜ばせようとするやろ? そういうところにみんなが惹かれるねん」
「ふーん、まあ、ええわ」
「2ヶ月に1回はデートしよな、たまには私も指名してや。どうせたまにはしのぶさんも指名するんやろ? ふふふ、忙しいね、崔君」
「僕は、恋人が1人ほしいだけなんやけど」
「風俗嬢でもええの?」
「ええよ」
「OLとか、沢山道を歩いてるで」
「気に入った女性がいたら、声をかけてるで」
「ナンパ?」
「うん」
「成功するの?」
「成功する時もあれば、失敗する時もある。勿論、失敗の方が圧倒的に多いけど」
「そのまま素人さんと付き合ったら?」
「いろんな女性と付き合ってきたけど、今は風俗のお姉さんと一緒にいる時が落ち着くねん。なんでか? わからへんけど」
「崔君は、苦労してる女性に弱いんやと思う」
「そうかな? そうやな」
「頑張って、崔君! いつか幸せになれるって!」
「あーあ、今度こそ恋人ができたと思ったのに-!」
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