美女たちと楽しむ無人島ライフ ~何をしても「神」評価の男、最強のサバイバル技術で生き抜く~
絢乃
001 無人島生活の幕開け
「まるで棺桶だな」
暗闇の中、俺は狭い木箱の中に横たわっていた。
内定ゼロの俺が大学四年の春にこんなことをしているのは何故か。
それは、とある実験に被験者として参加するためだ。
政府と多くの民間企業が共同で行う、史上最大規模のプロジェクト。
災害や戦争で日本が孤立した時でも生存できる体制を確立したい政府と、最先端技術の実証を行いたい企業の思惑が合致して始まった。
俺をはじめ、実験の参加者がすることは単純だ。
兵庫県中部の山岳地帯を掘削して作られた半径約20キロの巨大ドームで、3年間のサバイバル生活を行うだけ。
ドーム内には無人島が再現されているとのこと。
最先端技術によって、ステータスなどのゲーム的な要素もあるらしい。
実験に参加するのだから、当然、報酬もある。
しかも期間が3年と長く、危険もつきまとうので高額だ。
なんと3年間を過ごすだけで2000万円も貰えるらしい。
そのうえ、順位の上位に入ると、別途で億単位の賞金が貰える。
大学生の俺からすると2000万円は大金だ。
しかし、多くの社会人からすると物足りないらしい。
だからなのか、参加者の大半を若者が占めていた。
ちなみに、俺は金が目当てで参加したわけではない。
メインは大好きなサバイバルを心ゆくまで楽しめることだ。
お金はついでに貰えてラッキーといった感覚だ。
「準備できたぞ、出せ」。
木箱の外から声が聞こえ、俺の入った木箱が動き出す。
微かに揺れ続けていて、ベルトコンベアの上を滑っているのが分かる。
「人工の無人島で3年間のサバイバル生活か……楽しみだな」
俺は箱の壁に片手をつき、胸の高鳴りを抑えるように小声で呟いた。
◇
『島に到着しました。箱から出てください』
真っ暗なはずの視界に、赤くて大きな文字がドンと表示される。
これは全員が装着義務のあるICL型ウェアラブルレンズのアシスト機能だ。
マイクやカメラが常時作動し、AIが行動を記録・評価するらしい。
……が、今はそんな説明を頭に入れるよりも外に出るのが先だ。
俺は箱の蓋を押し、そっと開けて立ち上がった。
「おお! これが、人工の無人島……!」
そこは森のど真ん中だった。
樹木が生い茂り、足元には豊かな落ち葉が積もっている。
湿り気のある土の香りと微かな花の甘い匂いもたまらない。
さらには遠くで鳥のさえずりが聞こえる。
何匹かの小動物がこちらをちらりと見ては逃げていった。
まるで人工ではなく天然のジャングルにでも入り込んだかのようだ。
しかし、よく見ると自然界ではお目にかかれない光景が広がっていた。
例えば植生などが分かりやすい。
温帯の植物だけでなく、亜熱帯の大きな葉を持つ草木も混ざっている。
遺伝子改良技術で多種多様な植生を共存させているとのこと。
さすがは最先端技術の結晶だ。
『箱の蓋を閉めてください』
再び視界に文字が浮かぶ。
従わないと消えなさそうなので、素直に箱を閉めることにした。
すると、箱全体がゆっくりと地面の下へ沈み込んでいった。
その後、穴の開いた地面は自動的に土や落ち葉で覆われる。
ほどなくして、何事もなかったかのように消えてしまった。
「これが最先端の物流システムってやつか。まるでSFだな」
しばらく感心して動けそうにない。
だが、現実にはそういうわけにもいかなかった。
とりあえず、俺は自分の装備を確認した。
無地のTシャツとカーゴパンツ、そしてブーツ。
他には何も持っていない。
所持品はゼロだ。
この状態から生き抜いていく……想像するだけでワクワクする。
ちなみに、参加時の契約によって、島での生活は全て自己責任だ。
仮に死んだとしても訴えることはできない。
だからこそ、本物のサバイバルと同じ気持ちで楽しめる。
「さて、とりあえず寝床を確保しないとな」
ドームの中は、季節や天候が外と連動している。
夜になったら気温が下がるし、雨も普通に降るということだ。
そんな中、このまま野ざらしで寝るのは危険すぎる。
猛獣が出る可能性だって否定できないし、最低限の拠点づくりは必要だ。
俺は周囲の探索を始めた。
倒木の下や岩陰など、安全な寝床になりそうな場所を探しながら移動する。
道中では動物の足跡も調べた。
幸か不幸か色とりどりの足跡が混在している。
小動物だけでなく、大型のイノシシやクマの足跡もあった。
もしかするとトラやライオンがいる可能性もある。
「思った以上に過酷そうだな。俺は平気だけど、後悔している奴が多そうだ」
参加者のスタート地点はランダムで決定する。
だから身近に誰もいないのだが、その点は良かったと思う。
皆で同じ場所から始まっていたら、早くもトラブルが起きていたはずだ。
「肉食獣の可能性を考慮すると、高所に逃げておくほうがよさそうだな」
最適な場所を見つけられなかったので、樹上を利用することにした。
それなりの高さにハンモックを張れば、一定の安全は確保できるだろう。
「それにしても……」
視界に映るUIが鬱陶しい。
クエスト、ショップ、ステータス……と、ゲームのような項目が並ぶ。
しかし、順位に興味のない俺には鬱陶しいだけだった。
ということで、視線操作でUIの表示オプションを変更。
初期状態では全ての情報がオンになっているが、俺は全てオフにする。
それでも、『メニュー』という項目だけは残っていた。
「ふう、これでサバイバルに打ち込めるぜ!」
軽くストレッチをしたら作業開始だ。
ハンモックの製作に必要な材料の調達に取りかかった。
太いツタを探し、丈夫な葉を集め、繊維質の皮を剥ぎ取る。
植物資源が豊富なので、上手く組み合わせればそれなりの寝床が作れそうだ。
「よし、やるか!」
準備が完了して気合を入れた瞬間、背後から元気な声が飛んできた。
「お兄さん、なーにやってるっすか!」
驚いて振り返ると、そこには二人の女性が立っていた。
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