第25話滝雄と早良親王の馴れ初め滝雄視点

 命に早良親王との事を話しておこう

「私の父は多治比たじひ浜人はまひと、早良親王の側近だった、私は末っ子で本来親王とお目にかかれる立場では無かったが、私に力がある事が分かり父が早良親王にお目通りをしてから早良親王と懇意にして頂けた仲だった、親王は私の力を気に入られてな、親王とよく心の内を晒して話したよ、親王は無実の罪を着せられ断食で無実を訴えられていた時におっしゃっていたのだ、『口惜しい、口惜しいが死んだとしても井上内いがみない親王のように怨霊になりとうない』っと、そんな早良親王の思いを踏みにじる行為が許せんのだ!」


「長岡京の暗殺事件は把握してたけど兄上も関係があったんだね」


「早良親王の無実を明かすために頑張ろうとしたけど、ほとんどの当事者が処刑され、叶わなかった、父が暗殺事件の当事者だったために長岡京の居場所が次第に無くなり平城京の旧屋敷へ移り、あちらで早良親王がお亡くなりになったと聞き今回は早良親王の怨霊が残ってないか見に行く途中だったんだ、もし怨霊になっていれば私がお鎮めしようと考えていたのだが先を越されたか」


「本来兄上も父君を処刑されているのであれば、天皇を恨む立場だったのではないのですか?」


「父自身がお認めになった罪ならば、恨むことは無い、もし冤罪だったのであれば恨んだと思う」


「それは良かった、もし兄上が復讐に駆られていたら私と会う事が無かったかもしれませんね」


「もし、会ったとしても命と兄妹になれたかどうかってところだな、人を恨むのはほどほどにしないとな、全くしないとかは生きているのだから無理だと思うけど、どこかで折り合いを付けないと限りなくて、自らの命を差し出してしまうものなのかもしれないな」


「恨みや憎しみは上手く付き合えば原動力や、現状打開策になるので人として必要な部分もあるけど上手く付き合えないと後々身を滅ぼしてしいますから兄上が言う通りほどほどが一番だよ、叡兄上の力が破壊に偏っていたから恨みに染まりやすかったのかもしれない」


「そういえば叡が見つからないしどうする?」


「んー、今のところここにはいないみたいだし私の方で探ってみるから兄上は普段通りに生活してて」


「分かった、絶対に一人で行くのは駄目だぞ、早良親王の怨念は私がどうにかしたい」


「うん、早良親王の事を思えば兄上にやって貰った方が良いかもね」

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