第2話
四国 愛媛県。海に面する、四国で最も栄えた場所、四国中央市。
ジージーとセミの音が聞こえ始めた6月の頭。もう、気分は夏休みを目前に、揚々としていたところだ。
繁華街からやや外れた、海沿いに、高等学校がある。
【渦闇高等学校】
そこに、彼は居る。
白の学生服を身に纏い、後頭部で一つ結びにした茶髪のポニーテール。一見して小学生と見間違えるほどに小さな背丈の1年生が、靴を脱いでしゃがみ、靴のかかとに指を掛ける。そして靴箱に靴を入れようとした時の事。靴箱の中に、封筒が入っている。
「……………」
大きな丸メガネを整えながら封筒の裏と表を確認すると、表には大きく、【果たし状】、そう書かれている。
「マジか…ラブレターだ…。やったぜ」
どうせ、中には何も書かれていない紙が一枚入っているだけだ。何も書かれていなくても、日時、場所、そんなもの、見つける事が出来て当然の事なのだから。
異様な気配があった。何かに見つめられているような、人の手のひらに包み込まれているような、そんな圧迫感が、付近を通る生徒に迸ると、身が震える。
彼はいつも時間ギリギリにやって来る。巷では、【世界最高峰】などと称される【占い師】だという。その風貌からは全く想像できないが、目を合わせれば確かに、異常な気配がある。まるで、闇を纏っているかのような。
【1年2組】、古臭い緑色の褪せた扉を開く。誰もが一瞥するが、誰も笑顔は向けない。
【占い師】の、この何でも見通すような眼、その人ならざる雰囲気はいつも、人を遠ざける存在だった。それこそ時には失神する者すらも出る程だ。丸もまたそれを理解し、不用意に人に近付く事はせず、教室の端、そこに座ってジッと本を読み続ける。
「ねぇ…アレが【占い師】やってるっていう、人?」
とある生徒が、教室の小窓を開けて、廊下から一人の生徒に話掛けた。黒い紙に、緑色のメッシュを入れた褐色の女性。その美貌から誰もが憧れるが、良い家柄と、生真面目なところから敬遠される事もある風紀委員長。
風紀委員長 三年 【
「………ふぅん…? アレがねぇ…。ん…アレは…」
廊下の奥から、二人の女子生徒が歩いてくる。
白銀に染めた髪の毛をツーブロックに刈り上げた長髪の女。その背後に、赤赤にした髪の毛のアイドル風のハッキリとした目鼻立ちの女が、堂々と歩き、一言も無く、1年生の教室に入った。
占星術師 【
占い師見習い 【
「?」
丸はその時、視線を置いて本を閉じる。二人は丸の背後に立つと、丸は背凭れに身体を預けるが、ふと思い、バッと身体を向けて、赤赤とした髪の女に視線を置く。彼女もまた気まずそうに視線を逸らす。
「え、出し主が早速来る?」
指を突き付けるが、その指に、ビニール袋を掛けた。
「昨日はどうも有難う。助かったわ」
「別に。なんてことないよ」
「【立木】が割って入ったんだってね。焔から聞いたわ」
「まぁね。彼女、結構腕上げたね」
「そう?」
しかしこの時、ガタッ、丸の正面に座っていた男が立ち上がった。
【渦闇高等学校】は、日本一、校則が緩いと評判だった。髪染めも、ピアスも、場合によっては制服すらも、それほど重要視されていない。だがしかし、流石にこれはと、思えるほどに顔面に取り付けられたピアスの数は20を超え、入学3日にしてボウズ頭を義務付けられた男が居る。彼は、自称、【占い師】だという。
自称占い師 【
身長158cmの小柄から繰り出されるその言葉に、龍華も誰も一切見向きもしない。
「なぁ龍華」
「まぁ話はそれだけなんだけどね。……貴方達、何かあったの?」
「いや別に?」
そうあしらって、また背凭れに背中を付けた。
「あのね丸」
だから龍華はその肩に肘を置いて、親指と人差し指で頬を抓む。
「話を聞いてくれ。龍華。コイツとはもう話をしないでくれないか」
「貴方の『いや別に』は、何かあった時に言うヤツでしょ?」
「本当に何も無いって。マジマジ」
手の先で手の甲を叩く。すると、その肩を突き放つように離れて、こめかみを掻いて、「ま、良いんだけどね」と明らかにそうは思っていない言葉を放つ。
「あのさぁ龍華。コイツ、そういうの勘違いしちまうから…。止めてくれねぇかな…」
「行くわよ。香奈」
「はい。『お姉さま』」
だが、余りにもバグったようなスキンシップにムカついて、香奈もまた、一歩その背中に近付くと、その肩を強く握った。
「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ…」
「ああああああああああ」
「ばーか」
二人は教室を出て、また、自身たちの教室の方に歩を進める。ただ立ち尽くす健太郎は、本を読み始めた丸の横顔を睨み、顔面全体に深い皺を寄せて下顎を突き出す。
「いい加減にしろよ…。ッゴミが…」
三年生の教室では、既に、【霊能寺 龍華】は教室に居て、席に座っていた。これは、実に稀な事だ。学校側は丸や龍華、香奈への【学校外活動】を認めている。職業を優先し、学業に関しては、試験の合否によって、単位を与えるという。だから龍華はあまり、学校には居ない。
隣の席は、【千条城 光江】。光江が遅れて隣に座ると、龍華を覗き込む。
「ねぇ、日之召天院くんとは、仲が良いんだね」
そして龍華は、一切口を開かない。
「………………」
彼女とは三年間同じクラスに居るが、それでも声を聞く事自体稀な事だ。
「普段も良く話す?」
「…………………」
全くの無を貫き、何を見ているのかも分からない、そんな目をしていた。
「あーー…。どれくらい付き合い長いんだろ」
「……………………………」
「そんなんで、仕事とかやれてるのかなーーー…」
「…………………………………………」
その後、1時限目までは出席したが、その後すぐに彼女は鞄を持って教室を出てしまった。
「諦めん?」
三年生 【
眼鏡を掛けた、そばかすの女は、苦く笑って光江を窘めた。
「…占い師…。放課後、日之召天院くんに会いに行くわ」
「ったく…」
だが、彼の放課後は、誰よりも早かった。彼は最も遅く登校してくる癖に、帰るのは誰よりも早い。ホームルームの終盤には既に帰り支度を終えて、机の横に掛けた鞄に指を添えているくらいだ。そして礼が終わると同時、むしろ教師よりも早く、教室を出る。
「ねぇ、日之召天院くんは?」
まだ、クラブの為に残る学生や、適当な談笑をする生徒達の中に顔を覗き込む光江は、周囲を見渡す。
「帰りましたよ」
「え!? もう!?」
「はい。アイツ、一番速いんですよ。帰るの」
「くっ! やられた…。じゃあ明日だな」
「だったら俺が話聞きますよ」
そう言って歩み寄って来るのは、【田中 健太郎】という、明らかにイカれたピアス塗れの顔の男だった。
「あぁ別に要らない。日之召天院くんに用があるだけだから」
「どうせ何か困ってるんでしょ。俺はアイツより格が上の占い師だし、アイツとは中学から一緒で、話は全部嘘ばかりのクズなんですよ」
「いきなり人をクズ呼ばわりする人間を私信用出来ないから。悪いね」
「あのね。俺だって言いたか無いっス。でも何度言っても聞かないバカなんですよ。少し強く言っていかないと、業界が回らない」
「何言ってんのコイツ」
「俺らも分からないんですよこれが…」
「日之の話になるとコイツ発作起こすんです」
「実際、俺の言ってる事は何も間違ってない。アイツのやった仕事で、マジで訴訟もののクレームなんて何個もあって、俺が何度も頭下げて来た。嘘ばっかりで金貰って、それで俺の評判まで落ちちまう…」
「こいつ日之が居なくなると言い始めるんですよ」
「日之が居る時はダンマリなのに」
「なるほどね。じゃあ、田中だっけ。何かやってみてよ」
そう言って、光江は廊下から腰に手を当てて見せる。
「……なにか?」
「そう。俺は占い師として凄いんだぞっていうの、ちょっと何か見せてよ」
健太郎はこめかみを掻いて、一度首を回す。
「あのね、そう言うのって、何か困ってる時に頼むもんなんスよ。何に困ってるんスか」
「だからさ。人なんて悩みは尽きないでしょ。道端で、私もよくあるんだけど、『何か悩んでますね?』『オーラが視えます』『不幸が近付いています』とか、なんか色々言ってくるでしょ。アンタ達」
「俺は言わねぇし」
「今言ってんじゃん。じゃあもう良い?」
「俺は被害者を減らす為に、助けようって話をしてます。アイツに嘘付かれて嫌な思いしたくないでしょ」
「それは私が決める事。だから、何かやってみてよ。ほら。アンタの占いの力、見せてみてよ」
「はぁ…。あのね。なら、分かりました。俺の事務所に来てください。そこでちゃんと話を聞きます」
「だから今やってみろって。私に、お、凄い、信じて良いかも、って思わせてよ」
ただ、この時健太郎が放つ言葉はとてもとても、陳腐なものだった。
「…ラッキーカラーは黒」
「…………」
「………」
「…………」
「は? 終わり? ふぅん。ははっ。オッケー」
「あのね。無料で出来る占いなんてこんなもんスわ。正式な依頼じゃ無いなら何も出来ない。こっちは技術売ってるんでね。だったら、ちゃんとした占いをします。だから、俺の事務所に来てくれますか? 今から空いてます?」
「お前の為に時間なんて作るかアホ。じゃ、明日日之くんにも同じ事聞いてみるよ」
「させない。させる訳にはいかない。アレは詐欺師だ。頼むから止めてくれ。詐欺に自ら引っ掛かる人を見過ごせない。これは俺の善意ですよ」
「言ってろアホ。お前、それよりも勉強ちゃんとしろよ? 1年で夏休みの補習受けるのお前だけなんだろ? 0点塗れだったんだって? ま、頑張れよ」
「………………」
そこは、四国中央公園。
夏は花に段々畑が彩られ、生い茂る木々が公園全体を緑に染める。人気の公園だった。屋根の付いたベンチの休憩所に、ラブレターの送り主が待っていた。
「来たわね!? 丸!!」
占い師見習い【
丸は、彼女に強い好意を抱いていた。
「……もっと熱烈なラブレターにしてくれない?」
ピキッ、と右の眉のあたりに力が籠って、顔が歪む。
「ウッサイ。キモいのよバカ」
こんな鋭い言葉だったが、それすらも愛おしかった。
「……今日は…倒す」
「……やってごらん?」
【占星術師】は、タロットカードを愛している。それも、こよなく、手足の如くその手に持ち、操り、肌身離さず持ち歩く。
故に視えるのは当然の事だ。
「召喚!! 【
香奈の身体から、闇が噴き出した。それは霧のように景色を汚す。その中から、カツ…カツ…、ハイヒールを鳴らして現れる、赤い革のジャケットを身に纏う、ギタリスト。ガムを膨らませ、割れるとまた口の中で捏ねて、また、風船を作る。
『恋は音楽だ。そしてそれは爆発だ。これを信条に結成されたガールズバンド。恋に恋する女の奏でるそのギターを聞くには、耳の鼓膜だけでは脆すぎる。彼女のギターは正に爆音。ステージの前には血肉の崩れたファンが積み重なり、人生に疲れ長い眠りに就くだろう。骨で聴け』
【
「召喚。【
黒い風が丸の周囲を翔る。いずれそれは風に削れ、獣の形を模し、降り立った。金色の眼はナイフの如く鋭く、その爪はまるで殺しの為にあるかのよう。
『川原に捨てられた四匹の犬が居た。だがしかし、一匹は力尽き、命を落としてしまう。一匹は怒り、一匹は哀しむ。そしてもう一匹は、深い深い憎しみを抱き、復讐に燃えた。一つの山を根城に彼らは策を練る。それも、人顔負けの、巧妙で、狡猾な。黒い風が野山を駆けて、人里に降りれば瞬く間に人が千切れて死んでゆく。食べる為ではない。殺す為に、殺しを楽しみ、復讐を喜ぶ悪しき獣。その名は』
【
「「カードセット!!」」
そこで、占い師見習いの修行が始まる。
「よし…」
(場面のカードは悪くない。取り合えず火力を上げながら場面を整える。まずは攻撃宣言を)
「攻撃」
「な!? くっ。良いわよ。緑の場面。【
【
【闇絆のギタリスト】 火力【300/300】
「……」
(また赤…)
「緑の場面で【
【
【闇絆のギタリスト】 火力【800/800】
「………」
(運が無い…。次は青のカードか…。これは保留ね…)
「赤」
「!」
「【
「くぅ…」
【
【妖怪 犬犬犬】 火力【1000/1000】
「たった1枚で越えんじゃないわよ」
「君の赤には何があるんだ?」
「これよ。赤。【
【
「まぁ受けよう」
【妖怪 犬犬犬】 火力【1000/900】
「よし。赤の場面。【呪われた楽譜】」
【呪われた楽譜】 属性【赤】 相乗効果【魂の火力を800上げる】
【闇絆のギタリスト】 火力【1600/1600】
「………」
(やっぱり運が向かないな…。赤に緑か…厳しい…)
「くっ…攻撃を受ける」
【闇絆のギタリスト】 火力【1600/700】
「手番の終わり。呪詛の効果が切れて、0。元火は900だ」
【妖怪 犬犬犬】 火力【900/0】
「私も。0だけど、1600上がっているから、かなり落ちるわね…。700」
【闇絆のギタリスト】 火力【700/0】
「『攻撃』。でも、赤に回復が来てる。【ジュエルフェアリー】」
【ジュエルフェアリー】 属性【緑】 通常効果【魂の火力を500回復する】
【闇絆のギタリスト】 火力【700/500】
「俺もだ。白。【花の蜜】」
【花の蜜】 属性【緑】 通常効果【魂の火力を500回復する】
【妖怪 犬犬犬】 火力【900/500】
「………どうする?」
「………」
(青の防御カードを使っておくべきだったかもしれないわね…。いや、もう遅いししょうがない。それにまだ1体目。それほど消耗する訳にはいかないんだもん)
「黒の場面。【
【
【妖怪 犬犬犬】 火力【600/0】
「黒。【
【蛤味噌汁】 属性【緑】 通常効果【【妖怪】の魂の火力を1000回復する】
【妖怪 犬犬犬】 火力【600/600】
「赤の場面で【
【
【妖怪 犬犬犬】 火力【900/900】
【闇絆のギタリスト】 火力【700/200】
「なら、攻撃を受けよう」
【妖怪 犬犬犬】 火力【900/700】
「『攻撃』」
「…………」
【闇絆のギタリスト】 消滅。
「……くっ…」
(残酷なゲーム…。本当ならずっとこの子で戦い続けたいのに…。此処は諦めるしかない…)
「はぁ…はぁ…ふぅー…。召喚。【闇絆のキーボーダー】」
「お、俺の推しぃ」
「キモいのよ」
金色の髪を靡かせる天真爛漫な美女。ふくよかな身体を揺らして全身で楽器を鳴らす。
『彼女の創る音楽はまるで、天国だ。音符一つ一つが飛び交う妖精の如く、その鱗粉が花を咲かせる力を有し、底知れない快楽が身体全身を迸る決しては入ってはならない魔の領域を創り上げる。彼女の創る音楽に嵌ってはならない。彼女の居るライブハウスは魔の秘境。人を堕落させる闇の音楽。それを聞くまでが、人間である為のボーダーライン。それでも人生に疲れたならば、骨で聴け』
【闇絆のキーボーダー】 属性【黒】 能力【召喚時、この魂の火力は相手魂と同じ火力になる】
「凶器の効果が切れて、400」
【妖怪 犬犬犬】 火力【900/400】
「能力発動。火力は400」
【闇絆のキーボーダー】 火力【900/400】
「ふぅ…」
(楽しい…。本当に。もうずっとこうしていたいくらい…。でも、それなら毒霧扇風機は残しておくべきだった。勿体なかったな…。それにさっきから運が全然向いてこない。属性が全然揃わない…。くぅ…)
「攻撃。黒の場面で【
【
【闇絆のキーボーダー】 火力【1100/1100】
「黒にカードをセット。んーー…キツいか…。もう一度、黒の場面。【
【黄金猫】 属性【白】 通常効果【呪詛による攻撃をする時、威力が倍になる】
「青の場面。【
【
「黄金猫の効果によって、威力は2000!!!」
「それが一番の悪手だ」
「え!?」
「【
炎が靡いた。三匹の獣の連携は炎の刃を振りかざし、迫り来る攻撃の全てを弾き返す。
【闇絆のキーボーダー】 消滅。
「そんな…。くっ…」
(黒の場面…。【心を蝕むラブレター】か…。使いどころはある。けど今は全然使い道が無い…。活着では無いのに、詰まった状態。はぁ…ラブレターですか…。このタイミングのこれって…完全にそういう暗示よね…。だから、見せたくはない…)
「はぁー…」
結局のところ、香奈はたったの一歩も踏み込む事も出来ないままに、手札が1枚、また1枚と消えてゆく。
『占いに勝ち負け』は無い、というのは、占星術師間では常識的な事だ。しかしそれは、『我慢』する為の言葉であって、やはり、全ての手札が手の中から消えてゆくのは、心に深い傷を与える。香奈はベンチに座って、もう沈みそうになる空を眺めていた。そこに、丸は自動販売機で買ったサイダーをうなじに当ててやる。
「ひぅ!! ちょぉい…」
「香奈もさ、誰も気にしてないのに、『
「それは私の勝手よ。私が満足するまで私はこのカードを使い続ける。それにね。好きなのよ。この子達のこと。古いカードだけど、この子達もデビューさせたい。私はガールズバンドのプロデューサーなの。良いでしょ?」
「使われない子達も可哀想だよ」
「毎日愛でてるもの」
「ったく…」
「アンタだって、デッキ3つ持ってるじゃない」
「その内の1つは越えたんだから、良いんじゃない? って話さ」
「それを越えるまで、やる」
「はいはい。お好きに? 帰ろうぜ?」
「………うん」
疲れたように汗を滲ませるその表情とか、匂いとか、直視も出来ないほそ麗しい。
だが、この恋は、上手くいかない。
それが占いの結果だった。『占いの結果』を、常に受け入れ、常にその通りに事を運ばせる必要があるのかと言えば、当然そうではない。丸は、その悪い運勢から離れる事が出来なくなっていた。
別れ際の事だった。丸は背中を向けて歩き出す彼女を呼び止めた。
二人が一緒にいる意味は、『修行』の域を出ない。だからこそ、それを抜きにした付き合いをなんとか引き出そうとしていた。そして、占いによれば、それは吉と出るがしかし、丸自身はそれが出来ないままに、「また明日」、余裕ぶった顔をして、手のひらを見せる。
「うん。毎日どうも有難う。あ、そうそう。三年生の変な女がアンタの事聞きに来たわ。何か知ってる?」
「? あー…。そう言えば今日覗き込んでたな。君達のところにも行ったんだ」
「変な人だった。気を付けてね」
「うん」
普段はナイフのように鋭い言葉で突き放してくる癖に、頼みごとの時だけ巧みな甘声を出す、厄介な女だった。なのに、それに惹かれてどっぷりと嵌り込んでいた。
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