第13話

しかしその姿は礼服ではなくダウンにデニムのいつもの服装で、おまけに全身いたるところに血がついている。



兄の前を横切った男から強いアルコールの臭いがした。



「何するんだよ?」



兄は慌てて立ち上がった。


男は酩酊した視線で一瞥をしただけで、祭壇を無視して一直線に棺桶に向かって行った。




言葉を投げようとした瞬間、兄は唇を閉ざした。




棺桶を覗き込んだその男は、見たことのない顔をしていた。



切なさを隠せない沈痛の面持ちで、男は僅かに目を細めていた。

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