第7話

弔問客が少なくなってきた時、ある男が来た。



その男は松葉杖をついて式場に入ること無く入り口に立ち尽くしていた。


顔を青ざめさせて見開く瞳に、困惑したようにしかめる眉。



男は祭壇に近付かなかった。


入り口から一歩も動かずに凍りついたようにその場に固まっていた。



親族席に座っていた兄は睨みつけた。



今更なんだ?

罪の大きさに気付いて身が竦んだか?

失って初めて知ったか?

アイツがあんな必死に訴えた意味が分かったか?



兄は許せない。

松葉杖の男が無意識のうちに犯した罪を。



男は睨んでいた兄に詫びるような哀しい視線を一瞬絡ませると、そのまま踵を返して式場を後にした。

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