第2話

整然と用意されたパイプ椅子に座るのはこの三人のみ。


だだっ広い式場は三人の感情とは裏腹に葬儀屋が慌ただしく駆け回っていた。



「そろそろ始めてもよろしいですか?」



真冬だというのに額に汗を浮かべた葬儀屋が兄に言ってきた。


静かに頷くと僧侶が入ってきて、兄達にうやうやしく一礼すると祭壇の前に座った。




流れ始める読経と漂い始める線香の香り。




兄は胸が苦しくなって息が止まるんじゃないかと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る