buried at love

第1話

兄の瞼は腫れていた。



普段はあまり好まない漆黒のスーツに、急遽買った冠婚葬祭用の黒いネクタイ。


そのネクタイがまるで自分を苦しめる様に、ゆっくりと首を絞めていく感覚に陥る。



隣に座るのは彼の母親。


母親は兄よりもずっと憔悴していて、どこか遠くを覗くように一点を見つめている。


その膝には兄の子供が無邪気にはしゃいでいる。



子供はいい。


まだ現実をよくは知らないから。


出来る事なら自分もそうなりたい。



兄は二人から視線を外しながらそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る