第47話

「…あなたは・・・誰?」



ここに居るのはふたりだけ。

そして圧倒的上下関係がそのふたりを取り巻いていた。



「やくざなの?」


「…ああ。そうだな。だから俺は人も殺せる」



照準をあらためて定めると若葉は身をすくめた。ヨシキはその様子に背筋が震えるほどの快感を覚えた。


サディスティックなわけではない。

ただ疲れている。

どうしようもない任務を与えられて疲れているから。

ドラマが見れなくて苛立ってるから。

全力で走って頭に血が上ってるから。


腹いせにこの女をどうしようと俺には権利がある。



どこからともなく聞こえてくる重低音が全身を猛スピードで駆け巡る血の音と共鳴する。


ヨシキはトリガーにかける指に力をこめた。



「お願い…指輪を返して」



ふと若葉の唇が囁いた。


その懇願する表情にヨシキは冷笑した。

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