第41話

途中、路地を曲がり看板を持って立っていた客引きの肩を掴んだ。


「うわっ」と小さく叫んだ客引きがバランスを崩す。

そのまま結末を確認せずに走り続けたけれど、背中に「てめぇ」という男の忌々しげな声を聞けば、どうやら客引きは上手く男の進路を阻んでくれたらしい。


若葉は左手を握り締めた。


どうしてこんな事になっているんだろう。


繁華街のにぎやかなBGMを振り切って、煌びやかなネオンをすり抜けて、若葉は必死に駆け抜けた。


微かに振り返ってみたが、もはや誰に追いかけられているのかが分からない。


息が上がった若葉は限界を感じていた。

もうこれ以上は走れない。

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