第8話

パンプスを履きながらよっちゃんにベーッと舌を出す。

そしたらよっちゃんも眉間にしわを寄せながら顎をしゃくって、威嚇してきた。


それを笑いながら受け流して「様子見てくるね」と多分ミワが居るトイレに向かった。



居酒屋は大繁盛。今日も1日ご苦労様。



私達もいつか社会人になって安い料理と安いお酒を飲みながら人生について壮大に語るのか、と思うとワクワクしてきた。


ハタチを目前にしたら年を取る事への恐怖が薄まった気がする。


みんなずっとこのまま成長して、このまま年を取って、きっとお互いの結婚式なんかに出席して。

子供を見て、孫を見て、死ぬんだろうな。


そのスタートが今日なのかもしれない。


記念すべき、夢への第一歩。


酔ってもないのにスキップ寸前の足取りでトイレに入ると、目の前の洗面台に両手をついて俯くミワの背中が見えた。



「ミワ?大丈夫?酔ったの?」



近付いて背中をさする。


ミワは息を荒げながら微かに首を横に振った。



「どうしたの?」


「……へん」


「え?」


「私……変」

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