第8話
「待って!!」
あまりの降水量に視界が利かず、数メートル先に居る男の姿がおぼろげになる。
知らない土地ではぐれたら、それこそ行き倒れになる。
朱里は白く霞む世界の中、対比する様な黒を見つけた。
あのラブラドールだ。
ラブラドールは男の左斜め前をリードも付けずにぴったりと寄り添い歩いている。
その目印を頼りに、朱里は降りしきる雨に息苦しさを感じながら歩いて行った。
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