第6話 帝国守護聖獣1位、ロベスピエール・シャルロット。
「何故です、どうして」
私は再び、やり直させられてしまった。
しかも侵略を請うた次の日に、巻き戻っていた。
《言ったでしょう、アナタには幸せになる義務が有る》
「無い、私にはそんな事」
《怠惰国が悪しき見本の代となって以降、歴代の王侯貴族の中で、アナタだけが侵略を願い請うた。この先はアナタへの対価、アナタをこうして産み育てた肉親への恩返し、アナタは幸せになる他に無いの》
「私に、私にそんな」
《アナタには愛国心が有った、決して愚かでは無かったの、アナタは賢き者となれたのだから》
私は、どうすべきか分からず。
子供の様に泣きじゃくっていた。
全ては無駄では無かったかも知れない、けれど全てが無駄に思え。
私は何をすれば良いのか、全く分からなくなってしまった。
《失礼します、何事ですか》
《無礼な方ね、子女の部屋に無断で入るだなんて》
《どうされました、アントワネット女史》
《私が虐めたの、彼女があまりに愛おしくて》
《アナタは》
《もう私の助けは必要無いわね、頑張るのよマリー》
まるで母親に捨てられた様な寂しさだった、悲しさだった。
私ははしたなくも声を上げて泣き喚いた、何故、どうしてと。
《何が有ったのか、お話し頂けますか》
「私は宿星、悪しき宿星なのです」
以降、彼女は真実を語り始めた。
幾度も生を繰り返し、国を救おうとしたが徒労に終わり、侵略以外に無い事を認めるに至った。
そして穏便なる侵略の為、祖国の王に説得を試みたが。
投降は叶わず、
と。
《何故、アナタが明けの明星なのですか》
「折角のご厚意を無駄にしてしまった、きっと、もっと何か良い手が有った筈なのに」
《有りません、アナタが良くご存知の筈だ、救い難い者は必ず出てしまうと》
「それはきっと、私の事ですね」
《そんな事は有り得ません》
「前回のアナタ様も優しかった、それにマクシミリアン様も、ありがとうございました。私は幸せを探しに参ります、侵略は致しません、お騒がせしました」
《お待ち下さい、アナタは酷く疲れている、どうかお休み下さい》
「ありがとうございます、ですが血税を無駄には」
《では私の屋敷へお越し下さい、費用は全て私が持ちます》
「いいえ、アナタには婚約者すらいらっしゃらない、売国奴との繋がりは将来を曇らせてしまいます。どうか老婆心をご理解下さい、全てはアナタ様の為、感情で判断を鈍らせてはなりません」
《なら婚約すれば良い、破棄も直ぐに行えます、どうか判断を皇帝に仰がせて下さいませんか》
「では、いずれ何処かで働きお返しますので、暫くは借りを作らせて頂きましょう」
《はい》
そして直ぐにも皇帝に報告すると。
《だから言ったでしょう、アナタに任せる、と》
《やはりご存知でしたか、侍女が
《そうね、けれど何処のどなたか、までは分からなかったわね》
『女神アシュタロトは、嘗ては豊穣神として祀られ、各国の女神の祖や併合が行われる程だった。だが戦が起こり、弾圧が起こり、悪魔とされた』
《そしてココでは神性を捨て、悪魔として存在するに至った、人を愛するが故に悪魔になられた方》
『前回の我々は、アントワネット・マリーを幸福に出来なかったのだろう』
《もう既に、滅びるべき、そう思われてしまったかも知れませんね》
『あぁ』
《申し訳御座いません、次こそ、今回こそ必ず》
陛下は何も仰らなかった。
何も。
「おはようございます、先日は失礼致しました」
《アントワネット女史、何をなさって》
「庶民として生きる練習を未だしていませんでしたので、お願いしているのです」
お掃除にもお作法が沢山。
《何故です》
「試してらっしゃるの?」
《いえ、何故庶民として生きようなどと》
「ココで貴族として生きるには、あまりに不出来ですから」
《そんな事は有りません》
「いえ、もう大丈夫ですから、お気遣いなさらないで下さい」
《何故ですか》
「あぁ、すみません、不出来な者の考えこそお分かりになるには」
《いえ、アナタは十分に貴族として》
「ですが失敗してしまいました、王妃となっても、何をしようとも。侵略は何時頃になりますか?それともなさらないのでしょうか」
《いえ、アナタ次第ですが》
「では時期も何もかも、お任せ致します、私には分からない事ばかりですから」
《申し訳無い、本当に、すみませんでした》
何故、謝ってらっしゃるのか私には分からない。
やっぱり私は不出来な根腐れ者ですね。
『ジャン』
《自分がどう動いたのか、どう失敗したのか、良く分かった》
ジャンがあまり失敗する事は無い。
だからココまで落ち込む事は凄く珍しい。
『宿星だとは聞いたけど』
《ココを何度も繰り返しているんだ、それこそ王妃もこなしていた》
『ほう』
《最後の最後にココへ来て、私が失敗してしまった》
『ほう』
《彼女は、自身を不出来な者だと思い込んでいる》
『侵略が失敗したから?』
《いや、滅びても構わない。そう存在していた事に気付いたのが、土壇場での事だったらしい》
『あぁ、けど無理でしょう、真の王族の血が何も無いだなんて』
《幾度もの繰り返しの中で気付けなかった事、誰も彼女を評価しなかった事が、彼女を不出来な者だと思い込ませたのだろう》
『あー、王妃様もしてたんだし、やっぱり自尊心が』
《いや、愛国心だ、だからこそ侵略を願ったが》
『全て徒労に終わったから?』
《いや、真意に気付けなかった事で、自身を無能だと思い込むに至ったらしい。王族教育を受け、剰え幾度も繰り返したにも拘らず、何故周辺諸国が手を出さなかったのかに思い至らなかった》
『あぁ』
真の王侯貴族の性質を持った者が、本当に王侯貴族の血が入っていない者から発生した。
そう願い請われた事が叶った。
けれど、その先を先達は考えていなかった。
《だから言ったのに、そう思っているのでしょうね》
『魔獣や聖獣達が止めていた理由は、そう言う事だったんだろうね』
「あぁ」
《はぁ》
《お久し振りね、灰色猫さん》
「シャルロット姫、すっかり立派になられたな」
《あぁ、それで私達には会わせる事を躊躇っているのね》
《真の王族と会わせる事で、より落胆を誘っては》
「いや、落胆は何処かに実力が有ると思っている者の行う事、アレにはもう無いだろう」
『あぁ、そこまで』
《そこまで、私が落としてしまった》
《何故?》
《多分だが、立場を優生させたのだろ、補佐としての立場を。口説き落とす事はマクシミリアンに任せ、適任者を探ろうとしたが、思う以上の速さで彼女は覚悟を決めてしまっていた》
『あぁ、様子見中に俺が褒めても真に受けなかっただろうし、ジャンが褒めても受け取らなかっただろうし。仕方無いんじゃない?』
「だが、そう死を覚悟しての死地にて、更に自身の能力の低さを自覚するに至り。そうなったのだろう」
《どうなの?実際は低いの?》
「いや、コレの受け取り方だけだが、そう無能そうでは無いな」
《じゃあ会わせたら良いじゃない》
《心の支えを失っている以上、補佐を、適任者を》
『ジャンにも無理そうだもんね』
《私の言葉はお世辞や同情としか受け取られていない》
《なら違うって言えば良いじゃない》
「我々が幾ばくか補佐し魔獣を付けさせてやれば良い」
『まぁ、支えは必要だしね』
弱くて脆い人種は、本来なら魔獣を必ず近くに置いておく。
けど今の怠惰国では、敢えて弱いままにさせる為、人種同士で支え合わせる為に敢えて付けさせない方針だったのに。
結局は蹴落とし合う。
柵も手綱も無ければ、直ぐに利己的となる愚かな人種。
それが大好きな悪魔と、大嫌いな精霊。
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