初恋の少女は、なぜ【悪逆非道】の【魔王】になったのか?
熱燗徳利
第1話 消えた少女
新年、
「了哉、何をお願いする?」
そう尋ねる稚夏は、振袖を着こみ、後ろ髪を
「それは秘密……」
「えー、ケチ。教えてくれてもいいじゃん!」
言えるわけがなかった。なんせ了哉は稚夏に『絶賛片思い中』であり、「今年こそ勇気を出して彼女に告白し、幼馴染の関係からもう一歩進展しますように」にと願うつもりなのだから……
幼少期からいつか告白しようと考えて、もう了哉は一六歳の高校生になってしまった。そろそろ彼女にこの思いを伝えなければならない。
「もしかして、あれかな? 今年こそ剣術の試合で私に試合で勝ちたいとか?」
「あ、ああ。それもあるな……」
了哉の実家には
「それもってことは、他のお願いもあるんだ?」
「俺の願いはいいだろ……そういう稚夏は何を願うんだ?」
了哉は必死に話をそらした。
「やっぱり皆の健康かな~」
「まあ、健康が一番だけどさ……」
「あとは……そうそう。今年はどっか遠いところに旅行したいなって」
彼女がそう呟いた時だった。神社の本殿が青白く光り輝く。そして、稚夏の身体も光に包まれていく……
「稚夏、お前……身体が!」
「えっ? 何これ? 何なの!」
突然のことに、稚夏も戸惑った様子だった。
稚夏を包む光の青い輝きは徐々に強くなり、その姿が見えなくなる。
「稚夏!」
「了哉!」
お互いの名前を叫びあう。しかし、それが最後に了哉が聞いた稚夏の声だった。
――そうして、光が搔き消えた後、篠国稚夏の姿もこの世から跡形もなく消えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます