視線
天川裕司
視線
タイトル:視線
先月の末に、俺の彼女は亡くなった。
今はもぬけの殻のような生活だが、
これから何とか生気を取り戻し
又これまでのような、
毎日の生活に戻ってかなきゃならない。
それがわかって居るのだが、なかなか。
彼女と俺が写ってる写真を写真立てに入れ、
それを棚に飾っていた。
でもある時から、その写真に何も映らなくなった。
「あれ?誰も居ない…?俺たちは…?」
それからわけのわからない時間が過ぎてゆく。
多分、俺にもわからない位だから、
人に説明したところで…
それからカレンダーを、
何枚か通り過ぎたのだろうか?
これさえもよくわからないまま、
料理を作り、家のことをして、
外にも出て、自分のことをし、
夢に向かう自分なんてまた見ながら、
街の音を聞き、車の音を聞き、
料理の音を聞き、
空気の数を何度も読んで行った。
それだけしても、
まだよくわからない時間がなんとなく、
ぬるま湯のように過ぎてゆく。
そんな時、写真立てを又見た。
ふと見ると…
「あれぇ?彼女がちゃんと居るじゃないかここに…」
何にも写ってなかった写真なのに、
そこに彼女が居た。見覚えのある彼女の姿。
いや、そう、俺はこの写真を見て居たんだ。
彼女がこんな格好で
こんなふうにして写ってるのを、
俺は以前に知っていた。
だからそれを思い出して、
ここにまた彼女が現れてくれた。
そう思った。
でもその時から、
その彼女の視線がなんとなく気になり始めた。
そうして見て居ると、
だんだん又その彼女の横に輪郭が現れ、
それを日毎に追ってゆくと…
「…え?これ、オレ?」
俺の輪郭と言うことがわかる。
そして3日後。
その彼女と横に居た輪郭は、
はっきり俺のよく知る彼女と俺そのものになり、
その4つの視線がその日から
部屋の中でずっと俺を見つめてくるのだ。
視線。
その視線を感じて居ると、又なんとなく…
「…こっちへ来い…君もこっちへ来たら良いのに…」
変に他人行儀な言葉ながら、
俺を誘うように思え始めた。
そして憑かれた様に風呂場へ行くと
俺がもう1人そこに寝ており、
それを確認してからリビングへ又戻れば
その視線がさらに強く感じられ、俺の身近にあった。
(捜査)
警察1「鑑識はまだか?」
警察2「どうやら男は自らここで…」
警察1「これ、写真立てか?」
警察2「なんでこんなボヤけてるんでしょう?」
(少しして)
警察2「どうやら他殺の線は無く、鑑識によれば部屋の持ち主は、部屋中を動き回ってた様子があると…」
警察1「とりあえず、関係者をあたってみるか」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=2ukIXrs-Gtk
視線 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます