(8)八台の端末

 僕も八歳になって今は学校に通っている。

 寺子屋で無くて、小学校。その後には中学校、高等学校と続くから、この国を造った転生勇者は近代以降の人みたいだ。

 そう、転生勇者が居るらしい。どういう経緯いきさつで転生勇者になるのかなんて、語るまでも無いと思うけど。

 僕の代では既に二人の転生勇者が生まれている。

 僕はその三人目になる筈のところを逃走に成功。

 残り五人が空き枠になっていて、それ以上居るかは不明。


 何でそんな事を知っているかと言えば、僕が取り込んだ端末のモニターがそういう表示になっていたからだ。

 ステータスとか、スキルとか。うん、既に転生していた二人の現状が全部分かるよ?

 僕のステータスも全部分かる。

 他の五台は未設定のまま。


 使用済みのモニター二台は、背中側に回した防具扱いの物。

 キーボードは左の腰と右のかいなの防具。

 マウスは他のと一緒にブラックジャック袋状の棍扱いかな。


 そんな訳の分からない状態になっていながらも、元の端末と同じく操作出来たのは僥倖――なんだけど……。

 自分のや未使用のも合わせてそんな端末が八台も有れば、何か凄い事が出来そうに思ったけど、残念、この端末は転生先の設定にしか使えないみたいで、画面の表示を変えても何も出来ません。

 アプリが無ければ只の箱って言葉通りで、それに気が付いた時には物凄くがっかりした憶えが有る。


 今は違うよ?

 パソコンに似た端末なら、その内自分でアプリを開発出来るかもって考えたら、わくわくしか無いし。

 まぁ、どんな言語でプログラムしているかも分からないし、そもそもプログラムで動いているかも分からないから道は遠いんだけどね。


 それに、武具や防具としても本当に役に立たないのかと問われたら、何と無くそこそこ役に立つんじゃって思ってる。


 キョウという名前のこの国だけでは無くて、結構世界的に信じられている世界観として、世界の何処かに天君が住まう宮殿が在って、そこでは天君の手伝いをする多くの使徒も暮らしていて、世界に起こる凡ゆる物事は天君の宮殿で決められる。そういう言い伝えが有る。

 僕に起きた出来事から考えても、きっと正しいと思って構わないのだろうけど、そうなると僕はこのキーボードで使徒達を打ち倒して道を切り拓いた事になる。

 相当な力が籠められていると思わなければ成り立たない。


 もしかしたら使用済みの二台は力が目減りしているかも知れないけど、それにしたって地上の生き物が相手になるとは思えない。

 斬り裂く事は出来なくても、当たれば昏倒させるに違い無いよ。


 こんなキーボードで無双したいとは欠片も思わないけどね。


 因みに、契約武具は破損しても修復する。灰になっても時間を置けば再び喚び出す事が出来る。手元を離れても呼び戻せるし、余り遠くに持って行かれると自動で消えたりもするみたい。

 だから、まぁ、僕も結構雑に扱っていたりもするんだけどね。


 特に僕の契約武具は、時間の無い中で八台の端末を、大布とベルトと使徒っぽい男達の長髪で無理矢理纏め上げた代物だ。

 だから、分解して組み直す事も出来る。

 モニターを三枚繋げた盾なんて、今の体の大きさだと持つのも大変だから、モニター一枚の盾に作り直してみたけれど、そういう改造を施すと元の状態でも今の状態でも呼び出せる様になったのは面白かった。

 まぁ、小盾を喚び出していると、大盾を喚び出す材料が無いから失敗するんだけどね。

 鎧になっているモニターを外して盾にする事も出来たし、盾を剣だと思って手に持てば剣扱いにもなった。

 実に不思議。


 それじゃあ、僕は色々と使い回せる素材を多目に持って転生出来たのがアドバンテージなのかな、とか思ってた。

 パソコンは、アプリが無ければ只の箱。ううん、アプリが入っていても、剣よりソフトな感じだから、今は謎の天界パワーで強くても、その内やっぱり使えなくなるとは思ってはいたけれど。


 でも、違った。

 ちょっと、違った。


 アプリが無ければ只の箱でも、この端末には既にアプリが入ってた。

 転生を司る機能は何の役にも立たなくなってしまっているけど、細かいステータスが見れるのは、僥倖なんて言葉で言い表せないくらいの幸運だったんだ。

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