第27話 ダンジョン トラブル
建物の影に倒れていた男の子を見つけた。急いで近寄って横向けにした。
「大丈夫ですか!」
「う……」
ざっと男の子を見て、大きなケガなどはなさそうだった。
「ケガはなさそうですね」
「そうみたい……」
生命反応が低ければ自動的に教会へ転送されるけれど……。どうして倒れているのだろう?
石で造られてるだろう建物の、がれきがたくさんある地下三階の岩の壁際。
白い花がたくさん隠れるようにひっそりと咲いていて、今それどころではないのに穏やかな気持ちになってくる。
「マオ様! 大丈夫ですか!?」
「えっ?」
ガクンと頭が下がって、その衝撃とサウスさんの呼びかけで気が付いた。どうやら僕は眠りそうになっていたらしい。
「なんだか……。眠くなって……」
「マオ様!」
もしかして男の子が倒れていたのは……。眠っていた?
いけない。僕まで眠っていたらダメだ。
「く……っ」
パチン! 自分の頬を自分で強く叩いた。痛い……。
「ここ、何かで眠くなるみたい。僕も眠りそうになった」
僕は立ち上がって辺りを見渡した。がれきの他は白い花が咲いているだけだった。
「私は別に眠くなってませんが……」
サウスさんは不思議に思ったのか、辺りを警戒していた。岩の壁の方には何本か枯れそうな大木が何本かあったけれど、そこに潜んでいる魔物はいなかった。
「とにかく、この子を外に連れて行かないと!」
僕と同じくらいの子だった。持ち上げて運ぶのは無理だったので、サウスさんにお願いした。……もっと鍛えて、持ち上げられるようにしよう。
「そういえば……」
白い花を見て思い出した。
「今は品種改良されていて名前は忘れたけれど。古代種のこの花、眠くなる作用のある花だ……!」
本で見た白い花。名前は忘れたけれど読んだことある。確か、忘却作用もある。
あ、名前を忘れている――!
「早くここを離れよう……!?」
これ以上ここにいたら、眠くなったり記憶が薄れてしまうので離れようとサウスさんに言おうとした。
ガサッ! ガサササ!
音の方を見てみると、大木が動いていた!
「えっ!? 木が……。木が動いてる!」
ガサガサ……ドシン! と大木が枝を揺らしながらこちらへ向かってくる!
「木!? トレントか!?」
サウスさんが驚いて身を構えた。
トレントは、いきなり襲ってきた!
「うあっ!」
ドンッ! 太い木の枝を振り上げて地面に叩きつけてきた! いや、僕達を狙っていた。
サウスさんは男の子を抱きかかえて、横にジャンプして避けた。僕も間一髪。ギリギリ避けられた。髪の毛をかすっていった。
トレント……生きた樹木の魔物。魔物とはいえ精霊と言われているはずだけど……。
太い枝をブンブン振り回して、僕達を狙っていた。
ドンッ! バキッ!
地面や壊れている石の建物の柱など、木のハンマーのようにぶつけている。大振りなので避けられるには避けられるけど、当たったら大けがをする。ケガだけならいいけど、致命傷になる。
「ん? あれは……?」
トレントの根の方に、
「焼いてしまいましょう!」
サウスさんの手のひらに炎の魔法が浮かんでいた。男の子は、がれきの影の安全な所に下ろしていた。
「ウガアアアアアア!」
トレントは怒りの雄たけびを上げた。
「ちょっと待って――!!」
「マオ様?」
「ガ!?」
僕はサウスさんとトレントの動きが止まっているうちに、素早く走って近づいた。
「えい!」
トレントは見上げるほど大きく、太さも両手でまわらない程太い
「ウウウウウウ――!」
「うあ!」
引き抜いた勢いで僕はコロンと後ろへ転がった。手に斧を持っていた。
「マオ様!」
サウスさんがこちらに来そうだったけど、手で制止した。
「もしかして……。あの子が君を、この斧で切ろうとしたのかい?」
僕は地面にお尻をつけたまま、トレントを見上げて話しかけた。トレントに引き抜いた斧を見せてみた。
「ウガガガガ……、ソウダ……」
わ、返事をした。話せるんだ。僕は続けてトレントに話しかけた。
「僕はこのダンジョンを管理することになった、マオといいます」
いきなりだけど自己紹介した。どこまで理解してくれるか謎だけど話を続けた。
「申し訳なかった。今後、斧で
僕は深く頭を下げた。男の子がなぜ、トレントを斧で傷つけようとしたのかは後で聞いてみる。
こちらから傷つけなければ襲ってこないはずの魔物だ。注意事項として冒険者に伝えていかなければならない。
「ウガガ……。ソレナラバ、コンカイハ、ユルソウ……」
トレントは攻撃態勢をやめた。どうやら話が通じたようだ。
「ありがとう!」
僕は立ち上がってトレントに近づいて、木の幹を撫でた。
「カンリシャ、マオ。イイダンジョンニ、シテクレ」
管理者マオ。良いダンジョンに、してくれ……。トレントの言葉。
「わかった。良いダンジョンにするよ、トレント」
ギシギシと枝が伸びてきて僕を包んだ。もしかして抱きしめてくれてる? しばらく僕はトレントと撫であいをしていた。
「じゃあ、またね! トレント」
トレントは自分の生息地へ帰っていった。僕達は地上へ戻る、魔法陣を展開した。
「ん……」
ダンジョンから地上に戻ってきた。とにかく無事に男の子を救出できて良かった。男の子は気が付いたようだった。
念のため、お医者さんも呼んでもらっていた。
「あれ? 僕はダンジョンにいたはずだけど……」
男の子は目を擦りながら上半身を起こした。救護室のベッドに寝かされていたので知らない場所で驚いたようだった。
「大丈夫? 君、ダンジョン地下三階で倒れていたんだけど……」
様子を見ながら事情を聴こうと思った。
目をぱちぱちしながら男の子は、少し考えて「ああ!」と言った。
「白い花を摘んでいて……。近くの木を切って、火を移そうとしたら襲ってきて……」
「なんだって!?」
僕達、周りにいた人たちと揃って叫んだ。
「え……。白い花は眠りに効くし、乾燥させて高値で売れます。……ダメでしたか?」
男の子は悪びれることもなく、僕達に言った。
「ダメです! 白い花って、それは危ない
乾燥させて粉状にし、使用する……。ダメ! ゼッタイ!
「医療用ならまだしも……それは」
待機していたお医者さんが渋い顔をした。
「早急に何とかします!」
ミレーヌとサウスさん二人は僕に頷いた。まさかそんな危険なモノが繁殖していたなんて。
「私が、その白い花の危険さを教えてあげよう」
お医者さんが男の子に話をしてくれた。いくら高値で売れるからとはいえ、体に害のあるものは扱ってはいけない。
「とりあえず、このハーブ水を飲んで」
「ありがとう御座います」
すっきりするように、ハーブとレモン、オレンジなど果物を入れたハーブ水を渡した。
上半身を起こして飲んだ男の子は一気にハーブ水を飲んだ。
「不思議ですね……。気分も頭もすっきりしました」
良かった。ハーブと果物の組み合わせは相乗効果があって体にいい。
「マオ君が作ったものには、不思議な力があるかもしれないね。もっと売れ出したほうがいい」
お医者さんも感心していた。ちょっと焦ったけれど、深く聞かれなかったので良かった。
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