第6曲 感情のシンコペーション②
練習は終わり、俺達はスタジオ前で別れた。
拓史にまた、連絡しとくかな。
あいつが練習をブッチするのは、珍しい。
佐山がいた時は、あいつらいつも一緒にきてたな、タバコ吸わないし。
そう思い左のズボンのポケットからスマホを出そうと手をかけると、タイミングよく電話がかかってきた。
秋山からだった。
「よぉ。どうした?今日仕事だったんだろ?」
「もう終わっちゃった?仕事終わってダッシュで来たんだけど。もうすぐそっち着く!」
「姫なら帰ったぞ。姫に連絡しろよ。」
「あー。姫あんまりスマホ見ないんだよ。」
「せっかくだし、
「行く!行くー!」
そして、俺達は駅近くのコンビニで待ち合わせをした。
駅近くのコンビニまで、歩いて10分ぐらいそのまま電車で帰れるし、たまには居酒屋にでも行くか。
そんなことを考えいたら、コンビニの前に着いた。
「やっほー。重そうな荷物ですぐわかったよー。」
秋山はスーツで、いかにもなビジネスマン姿だった。
自分が社会から離れているという実感がする。
「社会人なんだな。」
「何言ってるの、ちひろくんもでしょ?」
あぁ。そりゃそうか。
俺も就職したほうがいいのかな、なんて考えなかったわけではない。
安定した仕事について、幸せな家庭を築いて、そんな幸せもあったろう。
そんな、幸せよりも俺は音楽と歩む道を進んだんだ。
だが、今でもたまに思ってしまうことはある。
知り合いのこういう姿を見るとなおさらだな。
「それじゃ、知り合いの居酒屋でいいか?」
「おっけぃー。」
俺達は、駅近くの居酒屋みかんに向かった。
駅の裏手、細い路地を入って行く。
そこは、キャパ30人ぐらいの小さなお店でバンド仲間からも有名な魚が旨い店だ。
「らっしゃーい。ってなんだサウロじゃねぇか。適当に座れや。」
「大将お久しぶりです。」
そう言って俺達は、座敷に座った。
「怖そうな人だね。」
秋山は、少しビビっていた。
最近あったばかりの奴の路地裏の大衆居酒屋に連れてこられ、あんな大柄な人が普通にいたらヤ○ザにしか見えないたろう。ぼったくられたらどうしよう。なんて思うかも。
それは、言い過ぎか。
「大丈夫だよ。酒も料理旨いぞ。」
「わかった!大将!俺達とりあえずビール。!」
こいつは、順応性が早いな。
ビールが来ると、俺達は適当に料理を頼んで、乾杯をした。
「あのさ、なんでバンド始めたの?なんでサウロなの?」
「そういえば、言ってなかったな。」
夜は、長い。
たまには、昔話に花を咲かそうと思う。
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