Gaura-ガウラ-

ねこまんま

プロローグ

「俺、バンド辞めるわ。」

 そう言われたんだ。


 バンドメンバーの佐山さやま 秀明ひであきは、ギターを担当していた。

 どうやら、彼女が妊娠したから実家の農家を継ぐのだとか。


 俺は、開いた口がふさがらなかった。

 佐山とは、長い付き合いだったが、それなりにバンドの知名度も上がってきて今やめるか?そう思ってしまったんだ。


 もともと俺達は10代の頃、別のバンドで競い合っていた。

 俺は、高校卒業後に専門学校に通って別のバンドを組み直した。


 あるライヴ帰り道、路上ライヴしていた佐山を見た俺は、そのギターの繊細せんさいさと歌声にあらためて惚れ込んで、俺は自分のバンドに誘った。


 それから3年が経ち、ファンもだいぶついてきてギリギリ暮らして行けそうな、そんな気がしていた。


 だが、あのバカどうやらファンと付き合っていたらしい。


 いや、もう結婚か。



 未来が見えなくなっていく。



 俺は、音楽が好きだ。

 音楽をしたくて、いろいろなことを犠牲にしてきた。

 友達も、親も、彼女も。


 こんなところで、立ち止まりたくない。


 で、新しいギターを募集したってわけだ。


 じゃぁ頼むぜ。糸ノ瀬 姫星いとのせ きてぃ


「その名前で、呼ぶんじゃねぇよ!

死ねぇやー!」

 そいつは、そう言って持ってきていた

ギターを俺に叩きつけた。

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