(短編)🌕カグヤ博士は火星に帰る

☃️三杉令

第1話 火星の学校

「地球ってきれいだよな」


 レオが呟いた。教科書に載っている地球の写真を見ているのだ。


「でも地球人って、何も知らないんだよね。火星に私達がいるとか……」


 ミーナがレオの方を向いて言った。それは事実だ。火星には火星人がちゃんと住んでいるのである。火星の文明はとても発達しており、惑星間移動や過去へのタイムリープすら可能なのである。それも1000年以上前からである。


「前にマークって地球人がしばらく火星に住んでいたじゃん」

「ばかね、それはハリウッド映画よ。マッド・デイモン主演のオデッセイでしょ」

「そうなんだ。あれ面白かったな」

「アンディー・ウィアーという作家のWeb小説が原作よ」


 火星では韓ドラよろしく、地球の文化が人気なのである。

 レオが話を変えた。


「知ってっか? 最近、地球のニュースで6500万年前の地層から人間のような化石が見つかったとか、月のクレータや恐竜絶滅の原因が天体衝突じゃない可能性があるって報道されていたの」


「そんなの常識じゃん。今頃気がついたのかな?」とミーナ。


 火星人はタイムリープで大昔の地球にも頻繁に行っていた。他の惑星にも。

 ちなみに6500万年より前には水星、金星、木星にさえ生命が存在していた。どの惑星も昔は環境が温和だったのだ。


「はいはい! みんな授業を始めるわよ! 今日の歴史は2,025,106ページを開きなさい」 


 先生が大きな声を出した。生徒達はタブレットで該当ページを開いた。タイトルには『カグヤ博士の活躍』とある。知ってるよ。6500万年前の話だろ。レオはそう思ったが、この有名な出来事は好きなので黙って聞くことにした。


「まず亜水星の吸収です! 太陽の近くにあった亜水星が太陽の引力に負けて吸い込まれてしまいましたね。覚えていますか?」


 太陽系には昔、水星よりも内側の軌道に亜水星と呼ばれる惑星があった。その星が6500万年前に太陽に吸い込まれたのだ。


「亜水星が太陽に取り込まれた時、激しい反応により短時間ですがが起こり、各惑星に大きなダメージが出ました。ここもテストに出ますよー」

「先生ー、わかってるよ。その前にカグヤ博士の出番なんでしょう?」

「はいレオ君、口は閉じててね~、合ってるけど私のセ・リ・フだから!」


 約1,100年前の火星の女性科学者カグヤ博士は、6500万年前の爆発放射で水星、金星、火星、木星が生物にとって致命的なダメージを受けたのにも関わらず、地球だけは何とか見事に守った英雄である。当時の博士のコメントが残っている。


「私はこの対策を月で発見しました。これは、私と同じ名前の太古の人間が考えた対策です。悲しい物語なのです」


 1100年前にカグヤ博士が地球と月を調査しに行った。そこから物語は始まった。



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 *本作はフィクションです。

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