第5話
「あ…………」
冷蔵庫を開けて、ラシオンは声を漏らす。
中には様々な食材や飲み物が入っている。
しかし、彼女が求める酒缶はどこにも無かった。
「ストック切れてるじゃん……」
最近は春明も飲むようになってきたため、消費の速度が速まっていることには気がついてはいた。
しかしラシオンは王宮でも
「補充しないと……」
ラシオンは部屋に戻り、タブレットのスリーブモードを解除する。
そして通販サイトを開き、常飲している種類をカートに入れて注文ボタンを押した。
「ふふっ、便利」
つくづく思う。
ここは便利で平和。
魔物もおらず、魔王も存在しない。
出て行かなくても暮らしていける環境が整っている。
反対に、外は怖い。
確かに魔物も魔王も居ない。
しかし、悪意は依然として存在する。
魔物でなくとも、弱っている人間を狙い、貪る輩は絶対に存在するのだ。
あの日、春明に助けて貰わなければ、ラシオンは今頃、どこに誰とも知らない男の家で酷い目に合わされていたに違いない。
(困ってる私に声をかけてきた時は良い人だと思ったのに)
注文を終え、ラシオンは適当な場所に座り込む。
いつもならここから漫画等を読むところだが、今日はどうもそういう気分ではなかった。
代わりに考える。自分が日本に来て、どのくらい経ったかを。
(初めて来たときが
世間では明日に年が明けるらしい。
新しい一年を迎え、来年も健やかに過ごせるように祈る。
(新年、新年か……)
春明は今日も変わらず仕事だ。
日本では言う程珍しくないことらしい。
「私、来年は何してるんだろ」
ふと、そんな疑問が零れた。
ラシオンの人生で初めてのことだった。
(だって私、もう王女じゃないし……)
今までは王族として、勇者の生まれ変わりとして、臣下や民から求められる自分であろうとした。
しかし今となっては全てが無意味だ。
だって彼らはどこにも居ない。
居るのは敗北し、肩書を全て失った一人の引きこもりの少女だけ。
チャイムが響いた。
玄関へと向かいながら、ラシオンは考える。
気がつけば、時刻は深夜になっていた。
「はい」
スリッパを履き、財布を持って玄関の扉を開く。
そして。
「――――――かはっ」
ラシオンは、心臓を貫かれた。
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