冬の鋏で
菫野
冬の鋏で
からだから三日月ひとつ切り離しさびしいといふこと考へる
人形の椅子窓ぎはに並べをり雲の尖塔つれてくるため
鹿の夢はその右手です黄の糸をたぐつてさらにお進みください
ゆふづつをゆびさし姪はわれを見き白馬はゆめに騎手を待ちをり
犀の森で告白してはいけませんたとへば雪を信じてゐること
雲ははやブルーカルセドニーのいろ冬のゆふべを地上に告げる
めぐすりの容れ物のふた転がりてそして出てゆくこの世界から
ひんやりと冬の鋏で布を断つたび深くなる雪の匂ひは
引き出しをひけば安全ピンがあり閉ぢれば罌粟のたねがあります
たれも見ぬ木々がひかりであることを三叉路の犬だけが知つた日
冬の鋏で 菫野 @ayagonmail
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