第一話 夕陽の中で
時の経つのは早い。我々がこの惑星に降り立って数年の歳月が流れた。ピーナは淋しくないのだろうか?海の多いこの惑星はどちらかというと青い色をしている。私たちの故郷はどちらかと言うと、緑の色をしている。植物が繁茂し覆い茂っている惑星だからだ。生命に満ちあふれていた…と言っておこうかな…
数十億年前にこの青い惑星は誕生したと聞いている。まだまだ綺麗に使っているとみえて大気は綺麗な方だな。
「何考えてるの?」
コロンはピーナにそっと聞いた。
「うん、何も考えてないけど…」
そんなことはなさそうだ、ピーナは少し涙ぐんでいた。思い出したのだろう、緑色の惑星のことを…
「みんな元気にしてるかな?」
コロンは優しく聞いた…
「ネコちゃん…ちょっと🐈⬛心配」
ああ〜森の中で別れたあの猫の事か!自分で餌を確保出来るから食べる物には苦労しないだろうけど…まあ、ちょっと心配かもしれないな。
「たぶん素敵な彼氏を見つけて元気にしてるよ!」
「彼氏か〜 それならいいけどね!」
好きな人と一緒にいることが一番いいかもね。ピーナは自分と重ね合わせてそう思った。友達も素敵な存在だけど、異性の存在はやはり生命の息吹きを感じる事が出来る。
「確かに不思議と重みが違うわ」
ピーナは納得していた。
コロンといる時がやはり好きだわ。
友達は多いけど、時間軸で切って考えると、その時点その瞬間で向かってる方向が微妙に違う事がある。気を遣ってよく合わせていたような気がする。そうそう、その通りだわ。でも居ないより、友達も素敵な存在ね。
夕方になってだいぶ陽は傾いてきていた。
二人は西の山なみに静かに隠れようとしている太陽を見て、お互いに何かを感じているようだった。
「この星に来て一番好きなのは、夕陽の中にいることね…」
ピーナはコロンの方を見ていた。
確かにこの中にいると、不思議と穏やかな気持ちになるのは何故だろう。包み込まれる感じなのか、それとも一つ何かが終わった安心感なのか、その辺は定かでないけど、心の周波数はゆっくりと時間を刻んでいる。
「故郷の夕陽を思い出したわ」
ピーナはちょっと空の上の方を見ていた。
そこはオレンジとブルーが混ざり合っているところだった。これから次第にオレンジが強くなって来る前の何とも言えない不思議な空間だった。
「ああ 確かに故郷を思い出すね」
コロンは懐かしくも複雑な想いだった。変化することは嫌いではないけど、違う目的のために星が変わっていくのは、いかがなものかと…
コロンとピーナの故郷は緑の惑星だった。時間がとてもゆっくり流れていく、光と水と空気が綺麗な惑星だった…
〜彼ら爬虫類型ロボットが来るまでは〜
呼び込んだのは惑星にいる爬虫類だったようだ。別に悪気があった訳ではないのだろうが、少し繁殖で優位に立ちたかったのでしょうね。
「繁茂している植物を改変してしまったよ」
最初は他の種族も期待して見ていたけど、次第に状況がおかしくなっていたんだね。組み込まれている種子データが大きく文明を崩していくとはね。それは予想を遥かに超えていた。
良かれと思ってする事は、何処の世にも、何処の惑星にもあるでしょうけど、意外とその行く末まで見抜いてやっている事は少ない。今回、劇的進化をもたらそうと思ってした事は、大きな破滅を招く事になった。一種の生命実験だった。惑星自体の自浄作用で、ありとあらゆるところで調和が崩れていった。多くの種族が各々旅立っていった。
あるものは自前の宇宙船で、あるものは即席の瞬間移動で。
コロンとピーナはある存在の助けを借りて異次元空間の移動をした。惑星を離れた後、次第に惑星は落葉を迎えた広葉樹のごとく静かに眠りについていった。再び活気を帯びて来るのはいつの日か、未だ時間と空間のはざまで漂っている多くの種族も、その時を待っているに違いない。
「今日の夕焼けとてもきれい」
ピーナは見ている先を指さしていた。
「本当だね綺麗だ」
コロンの顔を照らしている夕陽が、次第に弱くなっていった。
「そろそろ帰ろう」
「うん!」
二人は手を握って
夕陽に向かって走っていった。
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