第270話
「…考えてみる。」
チラリと俺の顔をみて同情を引くようにがっくりと肩を落とす真治はそのまま食堂を後にした。
「真治は気が乗らないようだな。無理な配置替えだったか。」
俺の呟きに
「何ほだされてるんです。キャバクラは葉崎が一番使い物になる場所です。しっかり働いてもらわないと。」
相変わらずな充だが逆に俺は心配になった。
「充…お前、寂しくねえ?」
「は?」
「お前のこと『天城くん!』とか呼んでくれて毒舌は泣き真似でかわしめちゃくちゃ打たれ強い。あんなキャラ貴重だろ。」
「どこがです!鬱陶しいだけでしょう。」
いやいや!皆が畏怖の響きを込めて『天城さん』と呼ぶ充をそれ以外の呼び捨てにするのは春菜、隼人、橘、親父にジイさん位だ。長い付き合いで『天城くん』呼びする真治は特別な存在。充は決して口にしないがな。
「何処に居ようが何をしようが…鬱陶しい存在ですね。多分、一生。」
充は俺の使った言葉をそのまま返した。
「…だろうな。」
何をしてても同じ松江組だということだな。
「お気遣い無用。私達は松江の駒です。」
しばらくして真治は季里乃の下についた。が
「匠さん!」
出勤前には必ず俺の顔を見に若頭邸に寄り
「鬱陶しい!」
充に貶され、嬉しそうに出勤するのが日課になった。心配してた嫁の恭子ちゃんのフォローも充が完璧にしていて気になることは季里乃の嫁さんに聞けるように口を利いていた。考えてみれば充は真治をかなりコキ使ってたし恭子ちゃんへのフォローも頻繁だった筈で
「ええ。恭子さんとはラインしてます。
夫婦関係込みで葉崎の生態は把握してますから。」
などと恐ろしいことをサラリと口にした。…聞かなかったことにしよう。うん。
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