理想の倉庫を創るために異世界転移 ~異世界で物流革命~
アクティー
第1ー1話:異世界へ(1:新天地)
「ここは……どこだ?」
気が付くと、シロウは全く見知らぬ場所に立っていた。
目の前には自然豊かな草原が広がり、穏やかな風が頬を撫でている。
足元には柔らかな草が広がっていたが、よく見るとただの草ではない。
風に揺れるたび、細い葉先が虹色に輝く。
太陽の光を浴びて宝石のようにきらめくその草は、現実では見たことのない不思議な存在だった。
シロウは思わずしゃがみ込み、その光沢を確かめようと手を伸ばした。
指先に触れる感触は、予想外に冷たく、ほんのり湿り気を帯びている。
周囲に目を向けると、青白い光を放つ木々が点在していた。
その幹は滑らかで、まるで蛍光灯のような淡い輝きを纏っている。
風が吹くたび、半透明の葉が鈴のような音を立てた。
音に耳を傾けると、どこか懐かしさと心地よさを感じさせる。
さらに目を引いたのは、腰ほどの高さまで育った巨大な花だった。
その花弁は月の形をしており、白と薄紫のグラデーションが美しい。
ふと花に顔を近づけると、甘い香りが鼻をくすぐった。
志朗は無意識に深呼吸し、その香りがもたらす不思議な安堵感に包まれた。
木々の間には、絡みつくように広がる蔦が見えた。
その蔦は触れると冷たく、一瞬ヒヤリとする感触に驚いたが、次第に温かさを感じるようになった。
(夢ではない、現実か)
足元には、半透明な苔が薄く地面を覆い、まるでガラスの床を歩いているような錯覚を与える。
日光が差し込むたびに苔の表面がきらめき、シロウの目を奪った。
見渡す限り広がるこの風景は、彼が知るどの世界とも違う。
草木の間から聞こえる鳥のさえずりや小川のせせらぎは、心地よさを与えながらも、そこだけは今までいた世界を思い出させる。
耳に響く自然の音と目に飛び込んでくる鮮やかで美しかった。
周りには高層ビルやトラックは見当たらず、彼が知っている世界のすべてが消え去ったように感じた。
シロウは驚きと混乱で一瞬立ち尽くし、何が起きたのかを理解するのに時間がかかった。
「さっきまで、確かに倉庫にいたはず……。それがどうして、こんなところに……?」
シロウの頭の中で混乱が広がる。
荷物が積み上がった倉庫、不安定に積み上がった廃棄寸前のパレット、そして、いきなりの強い地震で倒れてきた棚、すべてがリアルだった。
それが、今ではまったく別の世界に放り出されたような状況。
「確か、どこからか声が聞こえて.......。」
志朗は、ここに至るまでの事を思い出していた。
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