●第6章:意識の連鎖が照らす未来
風蘭の発見は、世界中に衝撃を与えた。人類の意識進化の可能性を示す彼女の存在は、科学界に大きな議論を巻き起こした。
神経考古学研究所は、世界中から研究者が集まる場となっていた。風蘭の能力は、従来の科学の枠組みを超えた新たな研究分野を切り開いていたのだ。
「これは、人類の歴史における重大な転換点となるでしょう」
霧島所長は、国際学会でそう述べた。
「私たちは今、古代文明が目指した進化の可能性を、より自然な形で実現しようとしています」
風蘭の変容は、他の人々にも影響を及ぼし始めていた。彼女と接触した研究員たちの中で、同様の能力が目覚め始めたのだ。それは、遺伝子レベルで眠っていた可能性が、彼女との共鳴によって活性化されたためだと考えられた。
「しかし、これは慎重に進めるべきです」
九条は警告を発する。
「古代文明の失敗を繰り返してはいけない。この進化は、決して強制されるべきものではありません」
風蘭も同意見だった。彼女は、自身の能力を通じて感じ取れる人々の不安や戸惑いを、誰よりも深く理解していた。
「この変化は、一人一人が自然に受け入れていくべきものです」
風蘭は、世界中から集まった研究者たちの前でそう語った。
「私たちは、意識の進化という新たな段階に入ろうとしています。でも、それは決して個人の意識や自由を脅かすものであってはならない」
彼女の言葉は、深い共感を呼び起こした。それは単なる説得ではなく、彼女の存在自体が放つ不思議な共鳴によるものだった。
研究所では、新たな発見が次々と報告されていた。風蘭の脳内で形成された量子もつれネットワークは、従来の神経回路とは異なる原理で機能していた。それは、空間と時間の制約を超えて情報を伝達できる可能性を示唆していた。
「これは、テレパシーの科学的な説明になるかもしれません」
水城が興奮気味に報告する。
「量子もつれを利用した意識の共鳴。それは、物理的な距離を超えて直接的なコミュニケーションを可能にする」
しかし、すべての人がこの変化を歓迎していたわけではなかった。一部の人々は、この進化が人類社会に与える影響を懸念していた。
「制御不能な変化は、危険です」
ある研究機関の代表者が主張する。
「もし、この能力が悪用されたら?」
その懸念に対し、風蘭は静かに答えた。
「この能力は、決して他者を支配するためのものではありません。むしろ、より深い理解と共感をもたらすもの。それは、私たち一人一人の中に眠っていた可能性の目覚めなのです」
時が経つにつれ、風蘭の言葉の真実性が証明されていった。共鳴能力に目覚めた人々は、決して他者を支配しようとはしなかった。むしろ、その能力は人々の間の壁を取り払い、より深い相互理解をもたらしていった。
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