神の素質

朝食を食べた後、身支度と荷物の整理を終えて私達はおばさん達に挨拶をして家を出る。その際にお昼ご飯にと竹の包みに入ったおにぎりを貰って、私達は礼を言って村を出た。


暫く歩いていると上の方から羽ばたく音が聞こえて、上の方からルド君が降りてきた。


「どうしたのルド君?」

「何のようだ?俺達は旅を続けるつもりだ」

「…まだ聞きたい事がある。最近血の匂いが気持ち悪くて、戦いづらい。あんたは如何してるんだ?」

「?、血が辛い?」

「鬼人は人肉に対して食欲が沸くと聞く、あんたはどうして平気なんだ?」


ルド君の問いにキョウ君が首を傾げる中、私は心当たりがあってルド君に答えてあげる。


「お爺ちゃんが花人の蜜と匂いを嗅いでいたら平気になるって言ってた気がする」

「花人の?」

「うん、村に他に半神さんや花人の老人とか居ないの?」

「…あの村は近年起こった災害から逃げてきたせいで、逃げ遅れた年寄りや災害を食い止めようとした私の父が亡くなってしまってな…そういう詳しい事を聞ける人が居ないんだ」

「そっか、それなら私達は川沿いに太陽が昇る位置を見ながら旅してきたから、逆の方向に行くと私達の村に行ってお爺ちゃんにお話が聞けると思うよ?」

「そうか…ありがとう、本当にあなた達はいい人だったんだな。疑ってすまない」

「ミオ、花人の蜜や匂いを嗅ぐと血の匂いが平気になるって何の事だ?」


ルド君が礼を言った後、キョウ君が逆に聞いてきた。


「あれ?おじさんとおばさんから聞いてないの?」

「ああ」

「えっとね、お爺ちゃんが言うには半神や鬼人には神になる素質を持っているんだって。でも素質を持ってるだけで辛い修行や鍛錬が必要で、中でも必要なのが1度も人間の肉を食べないことが決まりなんだって。人の肉を食べたら最後、知能が落ちて怪物に姿を変えるってお爺ちゃんが言ってた」

「怪物…」

「あんな気持ち悪いものを?しかし鬼人は人間を食べると聞いたが…」

「そこで花人が必要不可欠で、花人が恋人や伴侶の為に作った蜜が半神や鬼人を、人肉の誘惑から撥ね除けるって言ってた!ルド君恋人も居ないって言ってたから、花人の人とチューしてないのが原因じゃない?」

「チュ!チチチチチュー!?く、口付けをしろって言うのか!?私に!」

「キョウ君、動物でも生肉大嫌いだから多分、私とチューしてるから効果あるんだと思う。詳しい事はお爺ちゃんに聞いた方が良いよ」

「へー…確かに母さんも道を踏み外さずにいい人だったから、父さんの影響が強かったんだろうなぁ」

「おじさんとおばさんに聞いてたかと思った」


ルド君が赤面でワタワタしている間に、キョウ君とお話をしていたら落ち着いたのか、深呼吸しながら私を見る。


「ふーっふーっ…そ、そうか…君達の仲と言い穏やかに話している様子から本当の様だな…わかった、君の祖父に詳しく話を聞いてみて、私の村の村長に花人と交際出来るかどうか掛け合ってみる」

「問題が解決して良かったねルド君!」

「ああ…その、色々と疑って悪かったな…じゃあな」


それだけ言うとルド君は羽ばたいて空に飛び上がる。あっという間に小さな人影になって、共に飛ぶ鳥と見分けが付かなくなった。


「ルド君、いい人が見付かると良いね」

「そうだなぁ」




それからも私達は村に通り掛かった際に、トラブルに巻き込まれては解決をする事を繰り返す度に、キョウ君が良い鬼と沢山の人に知られていく内に、100年経った時には神様と呼ばれる存在になっていた。私の体も何時しか老いを感じなくなり、子孫達が繁栄していく内は地を見守る神様をやっていこうと決めていた。

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