新しい村

黎明期キョウとミオ②




キョウ君と旅に出てから一月が経った。私の花人の体は綺麗な水と元気な太陽の光があれば、ご飯はあんまりいらないからキョウ君だけが食べる分を動物を狩ったり、木になる果物を採って食べたりしている。


「そういえば魔物って食べれるのかな?」

「前に父さんと母さんが試したら、臭くて食えたもんじゃ無かったって言ってたな」

「そうなんだ」


たまに何も獲れない時が続いた時は、沢山キスをして蜜を舐めさせれば、空腹も紛れるし栄養になるってキョウ君が言っていた。


「ん…ぷは、キョウくん、美味しい?」

「ああ…美味しい、キスするだけなのに、腹が溜まっていって変な感じだ」

「嬉しい」


山を越えて野を越えて行くと、村が見えた。けどキョウ君が鬼人である自分が受け入れられるとは思えないからって、迂回して行く事にした。


「キョウ君はいい人だから大丈夫だと思うのになぁ」

「他の鬼人が悪さをしているから難しいと思うな」

「それはそうだけど…」


「キャー!誰かぁ!!」


「「!?」」


村の近辺で悲鳴が聞こえて来て、キョウ君が私を抱き上げて悲鳴の聞こえる場所まで走る。そこには大型の猪が村人を襲っていた。それを見たキョウ君が私を降ろして猪の方に駆け出していく。


「猪がぁ!誰かぁ来てぇ!!」

「ふんっ!」


猪の顔面に蹴りを繰り出していくのを見ながら、私は村人の方へと駆けていく。


「なっ何!?鬼?鬼人!?」

「キョウ君です!大丈夫ですからこっち来て!」

「あ、ああありがとうねぇ!」


私は村人の裾を引っ張りながら村の方へと逃げる様に誘導する。そうしている間にもキョウ君が猪を投げ飛ばして、近場の大岩に全身を強打させ気絶させる事が出来た所だった。


「大丈夫かーっ!!」


そこに村の方から大人達が手に武器を持って、駆け出してきた。


「な、なっ何だぁ!?どういう状況だコレは!」

「キョウ君は助けてくれたいい鬼人です!早く猪にトドメを刺して下さい!!」

「えっ!?あ、分かった!とりゃあ!!」


私が大声でそう言うと村人達が手に持つ武器で猪の頭部を潰し、トドメを刺す。その間に私はキョウ君の下に駆け寄る。


「キョウ君、大丈夫だった?」

「ああ、あれ位どうって事ねぇ」

「良かったぁ」


「あの2人が私を助けてくれたのよ!恩人よ!!」


そうやり取りをしている内に、助けた村人のおばさんが武器を持って駆け付けた村人達に、そう大声で説明していた。私達を見てくる村人達に私は何となく笑いながら手を振った。




×××




「いやー目出度い!今日は猪鍋でご馳走だぁ!」


あれから私達は村人達に迎え入れられ、村の中心で宴会が開かれて、助けたお礼にと晩ご飯にご同伴させて貰った。


「いやー流石鬼人なだけあって強いね兄ちゃん!猪を素手でぶん投げる奴初めて見た!」

「どうも」

「まさか花人が鬼人と旅してる何てなぁ、どういう関係?」

「恋人…かな?好きな人です」

「若いねぇ!ほら近場で採れた山菜食べる?」

「いただきます!ここの村人達いい人で良かったねーキョウ君」

「ああ」


キョウが打ち解けられて安心していると、村の奥の方で大きな舌打ちが聞こえてきた。


「チッ…鬼人がいい奴な訳ねぇだろ」

「どうせ略奪前の下見に来たんだろ」

「はいはいご飯食べられるだけ有り難く思いなさい!文句言うなら食べなきゃ良いの!」


そんな感じの悪い人達をおばさんが大声で怒鳴りつけた。


「ごめんなさいね。最近近隣で鬼人による強盗事件が多くって、ピリピリしてるのよ」

「今晩はウチで泊めて上げるけど、明日になったら村を出た方が良いわよ。アイツら余所者に何するか分からないからさ」

「そう…ですか」


そう言われて私は少し悲しい気持ちで、山菜料理を口にする。お母さんが作る味とは違って美味しいけど少ししょっぱい様な気がした。



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