2話 クラスメート
警察が学校の生徒にも事情聴取とかしていた。
私は、ずっと家にいたし、家族もそう言っている。
だから犯行とは関係はないとされたようだった。
あのアプリは、単にゲームじゃなく、現実世界にいる人を殺せるということなのかしら。
それとも、偶然なの?
先生を刺したときの映像が蘇ってきた。
なんか、理科の実験でカエルにメスをいれているような感覚。
あの時は怖かったけど、罪悪感はなく、別世界にいたような気分だった。
ただ、快感だけが残ってる。
そして、快感だけじゃなくて内心は笑いがこみ上げてきた。
変態から見られるという日々の実害も排除できたことに。
たぶん、人が死んだんだから、そんなこと思うのは不謹慎なのよね。
でも、自分の気持ちって抑えられないじゃない。
思うだけだなら自由だし。
でも、今回は、私が殺したのかもしれないけど。
いえ、警察だって、不自然ではあるけど自殺としたんだから、私のせいじゃない。
私って、ひどい人じゃないわよね。あいつが悪いから自業自得なのよ。
数日後、先生の葬儀が行われたんだけど、ほとんどの女子生徒は参列しなかったと聞いた。
私は知らなかったけど、先生は独身だったみたい。
親が、もっと慕われていると思っていたと泣いていたらしい。
育て方が悪かったと反省するしかないわね。
でも、犯人にされずに嫌いな人を殺せるなんて、このアプリは使えるわ。
まだいるのよ。嫌いなやつ。
学校にいる女性のクラスメイト。
いつも、自分はどれだけお金持ちで、かわいいかを自慢し、私のことをバカにしてくる。
この前は、お昼に私の机にわざとぶつかってきて、そのせいで私のお弁当が落ちちゃった。
あれ、ブタの餌が落ちちゃった、ブタなんだから、落ちたものを食べなさいと。
そう言いながら大笑いしていた。ひどいやつでしょう。
そもそも、そんなに可愛いわけじゃないし、スタイルだって、胸は板みたい。
足もぶっといし、目も少し離れていてブサイク。
声もキンキン声で、品がない。人格のなさが漂っているのよね。
なんか渋谷にしょっちゅう行っているらしいけど、アクセサリーとかださい。
洗ってないのか、薄汚れたぬいぐるみをカバンにいっぱい付けている。
あんな汚いぬいぐるみなんて気持ち悪くて、触れたくないって感じ。
どうしてか、成績がいいことだけは認めるわ。
国語とか、古文が得意みたい。
でも、昔から思っているけど、国語とかって学問なのかしら。
誰でもわかるちゃんとした文章を書くとかは重要かもしれない。
昔から、人々の娯楽でもあった。
でも、「それ」は何を指しますかなんて学問なのかといつも思っている。
だから、そんな分野で点数が高いからって、なにも自慢にはならないのよ。
そんなことで私のことを見下さないで。
あんな女性に興味があるって男性がいたら、それって奉仕活動って感じよね。
どうも、この女性の親が学校にいっぱい寄付しているみたいなのよね。
だから、先生も、この女性のいじめとか見ても、何も言わない。
世の中って、金、金、金って腐ってるわよね。
授業では、正しい行いとかいうのに、言っている側から間違ったことが横行してる。
家も少しは裕福らしいけど、そんなに大金持ちじゃなくて、少し金回りがいい生活って感じみたい。
それなのに、人を見下す態度って、おかしいじゃない。
この世に生きていてはいけない人なのよ。
こんなやつだけど、それなりに取り巻きがいて、私が騒いでも誰も相手にしない。
私にぶつかってきて文句をいうと、その取り巻きが私を囲む。
それを先生も、下をみて気づかないように通り過ぎる。
そんな中で、他人を頼っても何もいいことはないと学んだ。
私は、こんな女性に屈服しないし、いつも睨んでる。
だからか、この女性の私への嫌がらせはエスカレートしていった。
ときには、私のスカートがハサミで切られていることもあった。
体育の時間が終わってクラスに戻ったときに気付いたの。
廊下では、あからさまに私の悪口を言って、噛んでたガムを私に吐き捨てる。
一回とか二回じゃないから、この女がいなくなればと何度、思ったことか。
だから、次は、この女をアプリに登録することにした。
こんな女、生きてる価値ないもの。
もしかしたら、現実の世界からも、この女を排除できるかもしれない。
今回も黒い空間に吸い込まれ、気づくと、電車が通る線路の上の歩道橋の上にいたの。
今、電車が下の線路を通り過ぎていった。
ここは、ここから見えるビル群から考えると、京浜東北線で、品川の近くって感じかもね。
先に高層ビルから漏れる光は見えるけど、この辺りは物寂しい住宅地って感じ。
数分おきに電車が通り過ぎる。
轟音とともに揺れ、歩道橋の上でも電車が通り過ぎるときには風圧を感じるわね。
電車の中では、この時間だから、酔った若者が大声で騒ぐ人はいない。
むしろ、おじさん、おばさんが仕事から帰るという感じなのかもしれないわね。
疲れた人たちは、歩道橋の上なんて見ることはないと思うし、関心もないのだと思う。
そして、この歩道橋は、あまり使われていないのか、人は通らない。
また、品川の近くとはいっても、この辺は住宅地が多く、ビルとかマンションとか少ない。
だから、マンションのベランダから見られているということもなさそうね。
そんなとき、前回と同じように、あの女性が現れた。
「あら、翠じゃない。いつみても、貧乏くさいというか、目障りな女ね。今夜出会うんなんて運がわるいというか、早く私の視界から消えなさいよ。」
「前から、ずっと思ってたけど、あんたは、どれだけ偉いのよ。人として、どうかと思うわ。」
「くだらない女がしゃべるんじゃないわよ。ブタはブタらしく、下を向いて落ちてるものでも食べていなさい。」
私は、あまりの屈辱に、その女の頬を叩き、髪の毛をひっぱった。
その女性も、私の髪の毛をひっぱり、取っ組み合いになった。
髪の毛を引っ張りながら、この女の顔を近くで見ると、清らかとはほど遠い顔にみえた。
にきびだらけ。その顔を手すりにこすりつけた。
擦り傷に血が滲んでいる。
目は釣り上がり、口は空いて歯ぎしりをしてる。興奮した馬みたい。
そう、もう人じゃなくて、けだものなのよ。
そんなけだものは死ねばいいの。そういう運命なの。
でも、相手も力いっぱい抵抗してくる。爪が私の顔をかすった。
血はでてないけど、なんてことをしてくれるの。
髪の毛をひっぱりながら、柵に顔を何回も叩きつけてやった。
口から血がでてる。そのぐらいやらないと日ごろのお返しにならないでしょう。
お腹にも、膝で蹴りつけたわ。
なにか口から吐き出し、ブラウスが汚れる。本当に下品で、気持ち悪い。
早く、こんなやつはいなくなってしまえばいいのよ。
そして、その女を強く突き飛ばした。
その時、足を取られたのかしら。
その女は、歩道橋の柵から体が乗り出し、元の体勢に戻れず、バランスを崩して落ちていった。
運悪くというか、そこに来た電車に轢かれたわ。
体は、手足がもがれ、まさにブタのような格好で宙に浮く。
そして、頭から落ちていく時にまた轢かれてクビがちぎれた。
ちぎれたクビが前に飛ばされ、その上を電車が通った。
そして、レールの上で顔はつぶれ、原型をとどめてなかった。
やっぱり、日頃から人としての行動できないようなけだものは、人として生きてはだめなのよ。
このような姿になったのは、元の姿に戻ったため。
人として間違って生まれてきただけだから。
むしろ、バラバラになった体を回収し、電車に飛び散った血とかを清掃する方々に謝りなさい。
あなたのせいで、気持ち悪い作業をしなければならないでしょう。
電車も止まり、帰宅する人たちにも迷惑をかけている。
本当に、生きてるだけでも迷惑なのに、死ぬときにも迷惑をかけるなんて。
本当に害虫というか、生まれてきたのが間違いだったんだと思う。
血が飛び散った電車の車体を見た直後、私は、前回と同じようにベッドで目が覚めたの。
ずっと家で寝ていたことになっているんだと思う。
これで、この世の中は少しは良くなったと思う。
あんな女に騙される男性もいなくなったんだから。
男性からも感謝されてもいいわよね。
あの女性の顔を見るたびに、苛ついていた時間がなくなるかと思うと、ホッとした気分になれた。
いえ、それ以上に快感という感覚かしら。
このアプリ、本当に使える。
翌日、学校に行くと、みんなの話題になっていて、先生からも自殺したと告げられた。
あの女性は、歩道橋から飛び降り、電車に轢かれたと。
ただ、自殺の理由がわからず、また警察が動いているらしい。
先生は、生徒の前で黙とうと言ったけど、私は笑いがこみ上げてきてきた。
先生は、そんな私をみて、不敬な態度だと怒ってたわ。
でも、これまで彼女の私へのいじめを見て見ぬふりをした先生から言われる筋合いはない。
そして、自殺したのは自業自得でしょう。
先生は、それ以上、何も言えずに下を向いていたのは当然だと思う。
そして、日ごろ、あの女の取り巻きたちも、一言も話す人はいなかった。
次は自分かもと怯えていたのかもしれない。
現実社会では、私が殺したことになってないんだから、怯えることはないのよ。
ただ、これから、私にちょっかいを出したらわからないけど。
だからおとなしくしていなさい。
それはそれとして、これで、私を貶めるあの女を、一生、見ることなく過ごせるんだと心が躍った。
その晩は、微笑みながら、ぐっすりと眠ることができたわ。
これも、このアプリのおかげね。
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