クール系ツンデレ生徒会長の【秘密プライベートチャンネル】を覗いたら、ヤンデレ実況で俺への独占欲がダダ漏れに!?
佐々木直也
第1話 ねぇ……わたしだけを見て
「……なんだ、これ」
放課後の誰もいなくなった教室で、オレ──
そのチャンネルに映し出されているのは、どこかで聞き覚えのある声。
顔にはモザイクがかかった状態だけど、学園の制服を着ているのは間違いない。
ってか制服って……ちょっと不用心すぎやしないか?
まるで身バレすることを意図しているかのようにも思える。
現にオレは、この動画配信者に覚えがある……
「ねぇ……わたしだけを見て。ほかの誰かを見たら……許さないわよ」
甘く囁くような声の中に、鋭いトゲのような狂気が混じっているのがわかる。冷やっと背筋が強張ると同時に、その独占欲むき出しの言葉にどうしようもなく胸がざわついた。
(これ……まさか白峰先輩、なのか?)
学園でも知らない者はいないカリスマ生徒会長──
気品と美貌を兼ね備えたクールビューティとして有名だが、この声はどことなく彼女に似ている。いやむしろ、そっくりと言っていいレベルだ。
そもそもオレは、なんとなく動画サイトを見ていただけだった。
そうしたらこの動画がたまたまレコメンドされてきて……そうしてつい再生してしまったのが、この『秘密プライベートチャンネル』。
この動画、明らかに普通じゃない。
ヤンデレという言葉がそのまま映像化されたような、濃厚な独占欲を匂わせる演技──いや、もしかすると演技ではないのかもしれない。
「……白峰先輩が、こんな動画を……?」
オレの頭は混乱を極めていた。
けれど、あまりにも思い当たるフシが多すぎる。制服のリボンやモザイクに隠された髪色。加えて、白峰先輩にそっくりな声質。それらが結びつくたび、オレの心臓はドキドキと激しく脈打つ。
「ふう……いやでも……まさかな……」
深呼吸してスマホの画面を閉じようとしたとき、背後から気配を感じて振り返る。
「きゃっ……あ、ご、ごめんなさい先輩!」
そこにいたのは、
彼女は、ポニーテールを左右に揺らしながらオロオロしている。
「友部さん……どうしたんだ? こんな時間に」
「え、えっと……生徒会の雑用で、ここに書類を取りに来たんですけど、それはいいとして……どうかされたんですか? ぼうっとスマホを見て……」
「なっ……い、いや、なんでもない。気にしないでくれ」
とりあえずポケットにスマホを押し込み、友部さんが画面を覗き込むのを遮る。
すると友部さんは、ひとつ息を呑んだ後、ちらりとこちらを見つめながら口を開いた。
「……ところで先輩、ルリ先輩のこと、どう思いますか……?」
「え……?」
このタイミングで、なぜ唐突に白峰先輩のことを聞いてきたのか……オレは思わず胸を撥ね上げた。
「……どういう意味だ?」
「い、いえ……あのその……な、なんでも無いです……」
友部さんは、まるで怯えているかのように身を縮こまらせる。
なぜだろう、彼女は明るく元気なタイプなのに、ルリに関する話題になると急に萎縮してしまう。
「友部さん。もしかして白峰先輩のこと……何か知ってるの?」
「え……そ、そんなことないですっ!」
友部さんはバタバタと両手を振って否定した。その目にははっきりとした動揺がある。
「そ、それじゃ、わたし急いでるんで……! し、失礼します!」
そう言い残し、オレを置いて教室から飛び出して行ってしまった。
(……やっぱり、なんかあるよな)
胸の奥に、じわりとした違和感が募る。
もしかして友部さんも、あのチャンネルのことを知っていたのでは……? それでオレが、いま見ていたことに気付いて……
あのチャンネルが本当に白峰先輩のものなのか、確証はまだ得られない。でも……
うっすらと、日常から逸脱し始める足音をオレは聞いていた。
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