8.



 「イングリドさんってぇ、何者なんですかねぇ?」

 「はぁ? なに急に」

 「だれだっけ、いんぐりど」

 「パラベラム様付きのメイド。ほら、離れの」

 「ああ。きれいなひと」

 「美人ですけどぉ、なんっか正体不明ですよねぇ」

 「あんのうん?」

 「すっごい世間知らずなのに仕事出来るしぃ」

 「屋敷の男どもより腕力あったりな」

 「ぱぅわー」

 「いつも静かだと思ってたら妙に度胸もあってぇ」

 「フランベルジュ様が相手でもビビんないしな」

 「美人で有能とかキャラ被って困るんですよねぇ」

 「誰と?」

 「あ?」

 「はぁ?」

 「わたし、しってる」

 「お?」

 「うん?」

 「いんぐりど」

 「なんですかぁ? 弱点とか弱みとかですかぁ?」

 「意味被ってんぞ有能メイド」

 「いんぐりど、こうちゃ、すき」

 「紅茶?」

 「……そうなんですかぁ?」

 「こうちゃのにおい、する。えぶりたいむ」

 「あぁ」

 「確かに良い匂いしますねぇ、いつも」

 「えにーたいむ」

 「つまり、美人で有能で良い匂いがするワケだ」

 「……」

 「……」

 「……」

 「……イングリドさんってぇ」

 「何者なんだろうな……?」

 「あんのうん?」

 「あなたたち、そろそろ仕事しなさいねー?」

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