赤い鳥
ヨイクロ
話
土曜日、駅の近くの繁華街を特に意味もなく歩いていた。
そのとき、白い箱を持った人が街灯の下に立ち、何やら道行く人々に声を書けていた。しかし、その声に反応する人は少なく、反応はしても少し視線を向ける程度であった。
私も特に気にもとめないといった様に通り過ぎようとしたその時。
「お金を恵んではくれませんか。」
その人は今にも死にそうな弱々しい声で話しかけてきた。ホームレスか何かだろうか。
「少量ですが受け取ってください。」
哀れに思い、100円玉を一枚たまたまポケットに持っていたものを渡す。その額が多かったのか、それもと渡す人が少なかったからなのか、その人は、
「ありがとうございます。」と晴れやかな笑顔を返してきた。
会釈をしてその場を去り、少しだけ高揚感と達成感に包まれて帰宅したが、心の隅で今日の出来事に少し違和感を覚えた。
集金箱はホームレスが持つにしては綺麗で整っていたし、何より立っていたのがおかしい。かといって何かの募金活動には見えなかった。見た光景を思い出すが、特に団体名を示す看板等もなかったと思う。
翌日の日曜日、昨日持ち歩いていたバックに赤い羽根がついている事に気づいた。特に赤い鳥を見た記憶がないので、通りすがった人の装飾品が取れて付着したのだろうと思っていたが。たまたま、つけていたテレビからこんなニュースが耳に入った。
『・・・日本人の募金離れが深刻化しており、現在、資金不足が深刻な赤い羽根共同募金の社会福祉法人共同募金会等の募金グループはホームレスになりすますなどして募金を集めており、これに対し世間では賛否両論の声が上がって・・・』
赤い鳥 ヨイクロ @yoikuro
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