第14話
「えっ? タナカさん、大阪支部を譲ってくれるんですか?」
タナカ・ゴロウとの会談から一週間後、ナオミは自分の耳を疑っていた。
「そうや。うちの関西の連中、お前の話を聞いて、みんな『ヤマダでもええやん』言うてはんねん」
タナカ・ケイスケが説明する。深夜のコンビニでの出会いをきっかけに、彼は積極的に両者の橋渡し役を買って出ていた。
「実はな、タナカ連合の関西支部のメンバー、ほとんどが中小企業の社長なんや。名字のことで苦労した経験、みんな持ってはるねん」
会議室の大きなスクリーンには、大阪の地図が映し出されている。タナカ連合の拠点が、次々とヤマダ化推進協会の拠点として塗り替えられていく。
「これは、すごいことになってきたで」
タロウが目を輝かせる。
「大阪の経済界がヤマダ化を支持するってことは……」
「うん」カナコが頷く。「近畿圏全体への影響力は絶大よ」
イトウ教授も珍しく興奮した様子で分析を始める。
「歴史的に見ても、大阪からの社会変革は大きな影響力を持つ。商人の街の実利的な判断は、往々にして正しい」
その時、キタガワが静かに会議室に入ってきた。
「私からも朗報です。暴力団関係者の更生支援団体が、ヤマダ化に賛同を表明してくれました」
「えっ!?」
「差別や偏見と戦ってきた人たちです。彼らには、名字を変えることの意味が、痛いほど分かるんです」
会議室に集まった面々の表情が、次第に明るくなっていく。そして──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます