分裂
FUKUSUKE
前書き
純文学というと芥川賞。共感と大衆の欲求を満たすエンタメ作品である直木賞と双璧を成す小説の分野です。
でも、芥川賞(純文学)は大衆文学と違って「共感できない」「エンタメ性が低い」などの理由で「難しい」という評価を受けることが多いです。
では、芥川賞が選ぶ「純文学」とは何か……ここ数年の受賞作を見てみましょう。
普通ではない女性が、社会の中で生きていくためにコンビニ人間となって働く――村田沙耶香の「コンビニ人間」
乳房に拘り、豊胸手術を受けようとする姉と、思春期を迎えて月経や男性との性交渉に忌避感を抱く姉の娘。老いを受け入れて淡々と過ごす妹の三人が一つ屋根で暮らす――川上未映子の「乳と卵」
体内にもう一人の脳と意思が存在し、体を共有する双子の姉妹。身体を共有することで死と意識というものの存在を考え、問うてくる――朝比奈秋の「オオサンショウウオの四十九日」
これらは、不器用で、生きにくい人生を頑張って生きる人(個)に焦点を当て、生き様を描くことで読者に新しい気づき、新しい感覚などの影響を与える作品ばかりです。
つまり、純文学作品に「共感」は不要。
こういう生き方があるんだ。こんな考え方もあるんだ。
そういう気づきがあれば、それが純文学作品に出合った意味。
どうか、そういう観点で読んでいただければ幸いです。
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