第2話 転生者
俺が異世界転生をしたのは、今から12年程前の事。
前世の俺ははっきり言って普通の人すぎた。だって25歳にもなって未だにパンの値段を見て、"美味しそう"よりも"安いか否"かって所に目が行くレベルだぞ?
まぁそんな訳で普遍的な毎日をおくっていた訳なんだが。
あるクッソ寒いクリスマスの日、目の前でイチャつくカップルを呪いながら仕事から帰っていた時に、スリップした車に突っ込まれてな。
そして神様とか名乗るやべぇ奴に『ごめん、人間違えた!詫びに転生させてやるわ!』とか言われたもんで、嬉々として受け入れたって訳。
そんな俺が送られた異世界は割と俺好みの世界だった。なんだっけな、神様が言っていたのは確か『魔法』と『魔術』と『杖』が織り成す世界?だったか。
ちなみに勿論ラノベを嗜んできていた俺は嬉しかったし、マジでそういう話があるんだ!?ってなったね。
たださぁ、神様の説明不足なのか、はたまたイレギュラーなのかは知らないんだけどさ?
転生した世界に朝が無いってどういう事なんだよってなったな。
ただ俺は朝なんか滅びろって願ってる民だから嬉しかったし、今もまあかなり嬉しい。
そんな訳で俺は赤子の姿を獲得して転生者としての人生を歩み始めたのだ。
ちなみに住んでる国は後々分かったんだけど、広大な大地に空いた大穴の中にある、地下王国『ナハティス』って所だった。
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俺が転生したのは『アウリーサ・ベルノート』とかいう赤子で、まぁかなりイケメンだったぜ。赤子としてはね!
アウリーサってのは名字、上の名前らしくて、そしてこの家がかなりの名家らしかったんだよね。
ちなみに母親の名前はアウリーサ・アウロリアで金髪の超ナイスバディな美女。
父親の名はアウリーサ・イーニサで赤髪の超イケメン。
しかも母親も父親もめっちゃ優しくって、メイドもいっぱい居てさ。
正直異世界転生スタートダッシュとしては完璧だったよね。
しかも生まれて直ぐに魔力をコントロール出来て、その結果前世のように機敏に動けるもんだからもう、ね?
そいで前世の頃には無かった概念の魔術やら魔法やらにも、ある程度子供ながらに取り組んでみたんだけどさ?なんかね、神様がくれた転生特典の中に『
『
それを使って肉体に魔術をまぜまぜして、成長して行ったものだから5歳になった頃にはもう───凄かったわけよ。
実際の話ではあるが、この時点のベルノートは『神様の生まれ変わり』や、『英雄王の転生者』などと言われていた。
もう母親も父親もアホほど甘やかしてくれて、最早苦労とか何それ美味しいの?って話だったわけだ。
で、俺が5歳の時、この国のお祭り──確か『
正直リファシーラは典型的なツンデレ赤髪美幼女で、リリウムはおっとり系ふわふわ青髪幼女だったんだけども、まぁ二人と仲良くなる前に魔物が祭りに乱入して来てね。
あ、この世界の魔物は『
んでまぁ……リファシーラとリリウムが襲われた時に少しやり過ぎてね。
二人とも貴族の名門だから直ぐに世に俺の実力が知れ渡ってしまったわけだ。
それから7年。
まぁ割愛するけど、悪の司祭アンガドゥの企みを破壊したり、魔剣士ベルセルクを倒したり、魔眼の悪魔をボコボコにして、アクセサリーを作ったり?
王様暗殺を阻止したり、散々な目にあいながら冰獣の大厄災である『
そしてつい先日、魔法学院カンタレラの入学テストを受けに行って、またしてもやり過ぎちゃってね。
もう学院長から「こんなに素晴らしい逸材が来るなんて、あれか?世界が終わるのか?」とか言われたほどだった。
ちなみに魔法学院ってのは何をする場所かって言うと、魔術師を魔法使いにする場所だな。
この世界では、魔術を極めると固有の魔法を習得出来るようになる。
その手助けと、あとは入学すると杖の原型を貰えるんだ。
『杖』って言うと木の棒をイメージするかと思うけど、実際その通りだ。
ただ、魔法使いになる時に『杖』は持ち主の魔法に適した形に変化するという特徴がある。
そして『杖』の形は、実に千差万別。
参考までに学院長の杖は『
だから俺も先人に見習って杖を手にして、魔法使いになろうとしたわけだ。
───え?なんでなろうとしたかって?
響きが良かったからに決まってるだろうが!
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そうだ、それで入学して、当然リファシーラとリリウムもいて、仲良くなって、クラスメイトが割と出来て───、
……じゃあ、なんで今の俺は、一人ぼっちなんだ?
なにか見落としが、ある……のか?
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包帯でグルグル巻きにされていた俺は、少ししっかりとしてきた目を片目だけ開き、何とか思い出すために視線をめぐらせる。
……見えるのは、白いベッドに布団。
多分誰かが置いていった花と花瓶、それからブレスレット?
ブレスレット……は、うーん、特に無いな。
まぁでも、割と前に謎の商人から似たようなものを買った記憶が無くはない…………確か腕輪としてはめると魔力がどうたらこうたら……。
────腕?
俺はふと、僅かに動かせる視線の中で気がついた。
妙に腕だけ巻き方が激しいという事に。
?腕、うで……腕…………。あ。
僅かに腕を動かしたところ、包帯が解かれ、そして、答えがそこにあった。
「……あぁ、そういう事。そっか、ソレか」
答えは得た。
雑に散らばっていた断片が噛み合っていく音がする。
「──────あんな事をすれば、そりゃそうか。───ちくしょう」
俺は思い出した。
自分が何をしたのか。
それを。
包帯の下、そこにあったのは真っ黒に焦げた腕だった。
「……手を伸ばしたんだな、伸ばしちまったんだな。太陽に」
それは後悔の言葉なのか、確認だったのか。
俺にも分からない。分かりたく無い。
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