2人のすれ違い

唯香を避けていく日々(1)

僕達が中学生になった頃。同時に僕と唯香が陽と陰に分かれていった頃。


僕は意味がわからなかった。過ぎていく日々の中で。

いつもなら唯香が隣に居て笑い合っていた日々が突然女の子と友達が周りに囲まれる日々に変わった。

だからなのかもしれない。

僕と唯香はここで分かれた。そう思っているのはきっと僕だけだ。








♢♢♢










入学式の日。

唯香は昨日、姉・歩葉あゆはの部屋で入学式にして行く髪型を編んでいた。

入学式でモテるため、と歩葉は張り切っているが当の本人は全く張り切ってなどいなかった。


「唯香ちゃ〜ん!何の髪型する〜?」


「何でもいい。」


「え〜、じゃあこれは〜?」


そう言い姉がした髪型はハーフアップと呼ばれるものだった。


「めんどくさい」


「こんな事めんどくさいって言ってたらこの世の中生きていけないよ〜?」


そんな事を言い合いながら姉は様々な髪型を試していた。

試しては写真を撮り、試しては…の繰り返しだった。

僕は女子は陰でこんな努力をしているのだな、と唯香が苦労している事も知らずに呑気に思っていた。

最終的に姉が個人的に良いと思った髪型で簡単にできるものを直接唯香に教えながら見せていた。

それはポニーテールと呼ばれているものらしい。女子の中では定番なのだという。

それをまた更にアレンジし、唯香の髪型はポニーテールという呼び名ではなくと呼ばれるものになっていた。

唯香も唯香で嫌なわけでは無いらしく、笑顔を隠しきれない曖昧な喜びと嫌悪感の混ざった表情で去っていった。









>>>













朝登校するとそこにはタマネギヘアーは無く、雑に下ろされた新橋色の髪の毛があった。

何故しなかったのかは分からないが、とりあえず話しかけようと思った。何か事情があったのかもしれない。


だが、話しかけようとするも、唯香の周りにはというオーラで包まれており、どうにも近づく事は叶わなかった。

僕の僕で自分の友達が欲しい、その思いで自分はこの中だと誰と仲良くなれるのだろうか、という思いですぐに埋め尽くされた。








〆〆〆








1時間目HR後。

教室は自己紹介の声で賑やかだった。


「宮本〜俺二宮にのみや二宮剛志にのみやたかし。よろしくな」


「おう。よろしく」


「私は剛志と同じ中学だった百野優美もものゆみね、百野ひゃくのって呼んでいいからね」


「じゃあ百野ひゃくの、よろしくな」


「ガチで百野って呼ぶんだ〜!笑」


「言い始めたのそっちだろ」


「そうなんだけどさ〜笑」


そんな感じで自己紹介の1日が過ぎ、帰り道の事だった。


「唯香〜一緒に帰ろーぜ」


「無理。1人で帰る。」


「何で?今まで一緒に帰ってたじゃん」


「お母さんが早く帰って来いって言ってるから。あや遅いし」


「じゃあ早くする。」


「そういう問題じゃ無い。あやは友達と帰ってればいいの。」


「どうしたんだよ、いつもみたいに笑って帰ろーぜ」


「もうほっといてよ」


「そんな固い事言わずにさー」


「宮本、もういいじゃん」


「宮本くん、早く帰ろ〜」


「二宮、百野、」


この日はそのまま3人で帰ったが、もう少し詳しく理由を聞いておけば良かった。

聞いていれば唯香の悩みの種は減っていたのかもしれない。

悩みの種で無くとも。

きっと悩みの種では無い。

なんていうひとまとまりの言葉では言い表せない何かがあったはずだ。

でも、その時の僕はそんな事1つも考えずにただ1つ、と自分の事しか考えれていなかった。

その時の僕に今の僕が何を言ったって解決しない。そんな事分かっていても。



後悔はしてしまう。、、、、、いや、するものだ。

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