第5話「罰ゲーム二十四日目〜二十九日目」
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二十五日目
今日は立花と待ち合わせして映画鑑賞。好きな小説の実写化だからどうしても行きたい、でも深夜のレイトショーだから女の子一人じゃ危険でしょ? ⸺だそうな。
どうも用心棒です。
この前の試合で捻挫してしまった立花は部活休んでいるから暇人。そういう経緯で最近は毎日LINEのやり取りする。将来彼氏ができたときの予行練習だそうな。この映画鑑賞もその一環。立花の距離が一気に近くなったがこれはデートではないと釘を刺される。
まあ、それはいいのだが、四六時中SMSを使ってくるので一緒にいるのと変わらない。深夜に質問攻めで疲れることも……。でも何故かこれで告白しようとすると怒る。真剣味が足りないと。あとスタンプだけもNG。
「ええぇ……………………これは恥ずかしいわね」
「まじかよ…………」
この映画、恋愛ものだから告白するにはうってつけのシチュエーションかもしれない。が、ラブシーンが予想より激し過ぎ、かえって萎縮してしまった。
終わったあとも気不味くて告白どころか声すら掛けられない。
やっと告ったのがラブホテル前なので、「このエロザル! 私の体が目当てじゃないでしょうね⁉」何故か立花にビンタされる。理不尽だ……。
二十七日目
今日は誘ってくれた立花の親父さんが運転して温泉地へ。幸い今日は学校が特別休校だったので時間を持て余すところだったから感謝。
何でも商工会で貰った日帰り温泉のタダ券が余っていたから日頃身体を酷使している立花の湯治を兼ね、お店を休みにしてやってくる。朝から車乗っていたので窮屈だったが背伸びをすると硫黄の匂いが鼻腔をくすぐる。
さすが本物、そこら辺の銭湯とは風格が違った。
しっかりと露天風呂でお湯を堪能したい。しかしそこには立花が先に入っていた。
「ここ混浴だったみたいね……」
「うん。驚いた」
「突っ立ってないで入ったら?」
何て答えていい思いつかないから頷いて誤魔化すように入る。ちなみにおやっさんはお風呂入らないでビールを煽っていた。これは夜まで帰れないかな……。
混浴は初めての経験でどう感想していいか戸惑うが一言、普段なら絶対見れない入浴中の立花が可愛かった。
「いくら湯浴みを身に付けているからってジロジロ視姦するな……その恥ずかしいのよ」
「まことに申し訳ない」
ここの露天風呂は若い人が利用することも配慮して女性はお風呂用ワンピース、男は海パンを導入している。
今日はたまたま団体さん受け入れで利用客が多いから二人で話すのも緊張する。
「好きだ付き合ってください」
「ちょ、ちょっとタンマタンマ! 確かにシチュエーションは最高だよ。でも高橋、場所をわきまえて。こんな観衆の中で告白するな! ロマンチックのかけらもない。五十点」
ついいつもの癖で告白するも、確かに周りにおじいちゃんおばあちゃんが入っているので羞恥プレイだった。ほっほっほっワシがヤングマンだった頃みたいじゃのうとか、あらあら若いっていいわね〜などと聴こえてくる。
慣れは恐ろしい。申し訳ない。
二十九日目
今日は日曜日。
立花とショッピングモールへ出かけていた。新しいバレーボールシューズを買いにきた。捻挫した原因でもある使い古した靴が壊れたから。
「これはデートじゃないからね。買い物だから男手が欲しかっただけだよ。他の意図はない」
「うん。でも立花が僕を頼ってくれてとても嬉しいよ」
ふんっと鼻を鳴らし早足で歩く立花。熱いのか顔が紅かった。
そのまま結局空が暗くなるまで遊んでしまう。
勿論僕は立花を自宅近くまで送り届ける。その間お互い無言で気まずかった。
「ここでいいよ」
「分かった。立花、今日も楽しかったよ。またあし⸺?」
「…………っ!」
帰り際不意に、「ううー!」柔らかい立花の唇が僕の唇へ重なった……。
「かかか、勘違いしないでよね! ……そう……まだ足の捻挫が回復していないからよろけただけ。これはノーカンだから! ノーカン! いいわね⁉」
「分った。気にしないよ」
だが立花は……鈍感、大嫌いと呟き走り去る。僕は選択肢を間違ったのかと立ち尽くした。
いや、立花は僕に好意があるわけがない。勘違いするな勘違いするな。
立花は優しいからこの馬鹿げた茶番に付き合ってもらっているだけだ……。
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