幼馴染の二人が僕に恋して取り合ってくるけど、コッチはド変態の妹の相手にするのに必死なんだよ!【ハッピーエンドマン名義】

十色【別名義・ハッピーエンドマン】

第1話 二人の幼馴染+α

 僕には二人の幼馴染がいる。


 いつからの幼馴染なのかといえば、幼稚園からだ。なので長い付き合いということになる。まあ、同じマンションに住み、同じ階で、しかもお隣さん同士なのだから、仲良くなるのは自然な流れだ。高校生になっても、それは変わらなかった。


 三人が全員仲が良いわけではないけれど。


 そんなわけで、この二人の幼馴染について軽くご紹介。


 まずは一人目の幼馴染。名前は明智心美あけちここみ


 頭脳明晰。高校に進学してもそれは変わらず、成績は常に学年トップ。そして学級委員長を務めている。しかも見た目まで可愛いときた。髪型は艷やかな黒髪ロングヘアーであり、それが彼女の可愛らしさをさらに引き立てている。一言で言うなら、『美少女』。しかも巨乳。天は二物を与えずとはよく言われるけれど、心美は一体、何物を与えられたのだろう。


 次に二人目の幼馴染。名前は裏部明莉うらべあかり


 明莉に関して説明するなら、心美とは真逆と言えば分かりやすい。性格はとにかく明るく、人懐っこい。友達もめちゃくちゃ多い。しかも、見た目に関しては心美と同じくとても可愛い。可愛いのだけれど、心美とはちょっと違う。背が小さく、童顔、そして前髪パッツンのボブヘアー。なんとなく小動物っぽさがあり、『ロリ系美少女』という言葉がしっくりとくる。胸は……残念なことにペッタンコである。で、猫被り。学校ではひた隠しにしているけれど、明莉はキレると手が付けられない程の凶暴性を持ち合わせている。しかも若干ヤンデレ気味ときた。


 まあ、そんな二人の幼馴染です。


 最初は三人とも仲が良かった。だけれど、中学校に入ったくらいからだったかな。心美と明莉の関係が少しずつ変わっていったのは。


 どんなふうに変わり、どんな関係になったのかと言うと、まあこんな感じ。


「いい加減にしてよね! 幻くんにはもう近付かないでって言ったじゃないの! なのにどうして明莉がここにいるわけ!? もう諦めたらどうかしら!?」


「うるさーい! うるさいうるさい! それって勝手に心美が言ったことじゃん! 決めたことじゃん! 明莉は従うつもりなんて全くないんだからね! 幻は私のものだから! そう決めたんだから!」


「ああ、そうですか! 学校ではいつも猫を被ってる胸がペッタンコの明莉さん! 学校で全部バラしてやろうかしら」


「ペッタンコって言うなし! 明莉は成長期だからこれから膨らむし! 超巨乳になるし! そっちこそ、学校では良い子ぶってるじゃん! 明莉のことをバラしたら、明莉もクラスの皆んなに心美の本性をバラすし! 明莉の方が友達多いからすぐに広まるけどいいの!? このオッパイ星人!!」


「なんですって!? オッパイ星人!? 失礼にも程があるわ! 私がオッパイ星人だったら、明莉は壁ね。この絶壁オッパイ星人!!」


「絶壁オッパイ星人!? 明莉が一番気にしてることをぬけぬけと! あのさ、人のコンプレックスを刺激してくるとか、最低だと思うんですけど! あ、そっか。オッパイに栄養全部取られて頭の中がすっからかんなのか。さすがオッパイ星人なだけあるね! あははっ」


「何を言っているの? 頭の中がすっからかんなのはアンタの方でしょ!? ねえ、学校内で一番のバカだと有名な明莉さん!」


「バカって言うなし!」


 まあ、いつもこんな感じ。今ではすっかり犬猿の仲になってしまった。どうしてこんな関係性に変わってしまったのか。端的に言うと、要は僕のことを取り合っているから。つまり、心美と明莉の関係性はお互いの恋敵に変化した。


「あのー、お二人さん? 僕の部屋でケンカするのはやめてくれないかな? それに、こんな時間にそんな大きな声で罵倒し合ってたらご近所迷惑になるんですけど。あと、妹にも丸聞こえだと思うし」


 一応、いつものように仲介に入った僕だけれど、全く効果はなし。二人の罵倒のし合いは止まらなかった。


 ちなみに二人の言う『幻』というのは僕のことだ。神宮寺幻じんぐうじまほろが僕の名前。それと、どうして二人が僕の部屋で口喧嘩をしているのか。今、この家には僕の両親がいないからだ。つまり、現在の僕は中学生の妹と二人暮らしである。どうして僕の両親が家を不在にしているのかって? 父さんと母さんは海外に移住というか遊びに出かけてしまっているからだ。どんだけ放任主義なんだよ!


「ねえ、お取り込み中申し訳ないけどさ。心美も明莉もそろそろ帰ってくれないかな? 宿題が全然はかどらないんですけど……」


「うるさい! 幻くんは引っ込んでて!」


「そうだそうだ! 大体、幻がハッキリしないからこんなことになってるんだからね! 優柔不断すぎだし!」


 僕は深い溜息をつき、大きく項垂れた。聞く耳なしですか。


 全く……。あ、念の為に一応。僕は決してモテモテのモテ男というわけではない。顔もカッコいいとは無縁な程に普通だし、性格も、まあ普通だと思う。だから学校では別段目立つ存在ということは全くない。どこにでもいるモブみたいなものだ。


 ……我ながら、自分を卑下しすぎかな。


 ただ、この二人にとっては別だ。別問題だ。幼馴染ということで付き合いが長い分、情のようなものを抱かれている。それが、いつの間にか恋に変化した。というのが僕の見解だ。知らないけど。


 それに、最近になってから厄介な奴が『もう一人』増えてしまったし。どんな奴かといえば、妹だ。この妹、一言で説明するとド変態。露出癖もあり、羞恥心やら貞操観念やらがあまりにも薄い変態だ。それが中学生になってから一気に加速した。


 今いる幼馴染の二人が帰ったとしても、今度はそのド変態の妹の相手をしなければならないのだ。いや、相手にしたくないからなるべく逃げるけど。アイツに捕まったら何をされるのか分かったものではない。うん、上手く回避しよう。


 こんな状況で宿題をやる余裕、あるのかな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る