デッサン

描写

　描写とは物事が浮かび上がる複製物だ。

　言葉や絵、音などの媒体を用いて物事の様々な側面を写し取る。

　物として存在する実体を情報に変換することで、伝達に適した形にする。

　複雑に多様な形を持つ物事をある次元の視点から切り取った描写は、物事の全貌を表すには足りない。

故に複数の媒体を駆使したり、受け手のイデアを想起させ補完させたりすることで、描写の質を高めることができる。

　描写には模造としての役割以外に描き手の明確な意図がある。

ある部分を強調して伝えたかったり、特定の感情を誘引させたかったり。

なので、描写の価値は再現度という尺度で測れると同時に、その意図の効果という尺度でも測れる。

　正確には描写は物事の再現ではなく、描き手の観察と思考の再現。

なので、描き手の視点の取り方から似た物の関連付けまで、描写は足跡が浮き彫りに現れている。