第2話 今緊急で回してます。

 ーダンジョンボンバー配信画面ー


「今、緊急で動画回してます」

 新一がダンジョン内を歩きながら、緊迫した顔で配信を始めてた。


「麻衣の元カレの洋一が僕らの関係が気に入らなかったらしく、暴れ出しました!」

「怖かったよー」

 麻衣も横から怯えた声を出した。


「あいつ、違法薬物のバーサーカーソウル飲んで暴れたんだぞ」

 浩司が状況を補足してきた。


 バーサーカーソウルは飛躍的に肉体の能力を一時的に引き上げるドラッグだ。

 欠点として依存性が高いのと、効果中は理性が吹っ飛ぶため使用禁止されている違法薬物だ。


「あれ使われたら、いくら盾士でもとんでもない攻撃するから、近づく事も出来なくて仕方なく放置してきました」

 新一の辛そうな顔が動画でドアップされる。


「暴れるなんてしないで、話し合ってくれれば」

 麻衣の涙ぐんだ顔がアップで写し出される。


 ー???ー


「ふむ、素人とはいえ下手くそな演技じゃのう、あの涙は目薬じゃな」

 長い黒髪に整った顔立ち、口調からは想像つかない若い女性が動画配信画面を切った。


「やつ等の居たダンジョンの特定は簡単じゃな、近いしまだ生きてるか見に行ってみるか」

 何故かニヤニヤしたその表情には正義感はカケラも見出せなかった。


 ーダンジョン二十四階ー


 動けない。

 俺は必死に逃げようと身体を動かそうするが全く動けない。


 まずい……。

 モンスターが近づいてきた。


『ブラックキャタピラー』

 ダンゴムシにムカデの頭をつけた様な肉食の虫系モンスターだ。


 身体も動かない、声も出せない、なのに意識と視界だけはっきりしている。

 こんな残酷な仕打ちってあるか?


 薬のせいか、気絶する事も出来ない。

 あぁぁ、誰か殺してくれ! 俺を殺してくれ!


「おぉ、まだ生きておったか、おぬしは死にたいか? 生きたいか?」


 前言撤回! 助けてくれ! 頼む頼む!


「死にたかったら瞬きを一回、生きたかったら瞬きを五十二回せい」

 なんだそれ! 俺は今喰われてるんだぞ! 痛てぇ、クソ! 五十二回やってやらぁ


「はっはっは、瞬きそんなにして必死じゃな! ほれ頑張れ、回数行かないと助けんぞ、早くしないと喰われて死ぬぞ」

 人の命で楽しみやがって!


「ふむ、五十二回行ったの、じゃあこやつは殺すか」

 待て、待ってくれ、助けるっていったじゃ……。

 あ、モンスターの方か殺すの……。

 俺の目見ながら言うから。


「そうじゃな、自己紹介しよう我はな異界より転生した蟲使いじゃ、この世界ではショウカと名乗っておる」

 そんな事より早く助けてくれ……。


「あぁ、それとじゃな、オヌシは薬の影響でまだ気づいてないじゃろうが下半身も大半が喰われておるから、このままじゃ助からん」

 コイツ俺を弄んで楽しんでいるのか?


「そう睨むな、幸い我の蟲を使えば治すことも生かすことも出来る、しかしそれなりに代償もあるが、それでも良いか? 良いなら瞬きを二回せい」

 何でもいい、何でもいいから生きたい。


「じゃあ、蟲をお主の身体に入れるぞ」

 ガァァァァ! 痛い痛い痛い! アァァァァ!


「ふむ、一匹じゃ足りんか、二匹ほど追加するぞ」

 アガガガガガ。


「このままじゃ精神が持たぬか、とっておきを使うが、コイツは少し変な性質があってなY染色体を壊して身体を再構築してしまうんじゃ、死ぬよりはマシだから…‥ふむ聞いてないか、まあよかろう」

 フピッ、ホペッ。


「再構築ついでにコイツらも入れてしまうか……こんな機会滅多にないし……ふふ、ふふふ、アーコノママジャ助からぬ、シカタガナイ持ってきた蟲を全て入れてしまおう」


 蟲使いの興味津々の爛々と輝く瞳だけが、地獄の様な状況で妙にはっきり頭に焼け付いた。

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