第5話 最後の日
明るくなると私は様々な器具が置かれた手術室のような所にいた。そこで私は初めて自分の姿を私を照らすランプのランプシェードで知ることができた。
私の姿は目も口も鼻も耳も確かにあった。しかし、頭は大きく膨れ上がり顔と身体の大きさが同じくらいという異形であった。
身体も手脚がないだけではなかった。肋骨もが膨れ上がるほど心臓が肥大していたのだ。
さて、研究者達の恐ろしい会話も聞こえてくる。
「これからやるのは究極の人間を創りだす実験だ。
この脳と心臓だけは優れたゴミに健康な目と腕に脚を繋ぎ合わせる。骨がおかしいから身体はこいつらの状態の良いのを繋ぐ」
「成功するでしょうか?」
「成功すれば富と地位が得られ、失敗したところで困ることは無い。こんなに良い話が他にあるか?」
「それもそうですね。それでは麻酔をかける準備をします」
「麻酔なんていらないだろ?勿体ないからこのままやる」
そうして無麻酔による激痛が約束された最悪な手術が始まった
私は絶望と共に覚悟をするとまず私の腹にメスが入り開かれていく、腹が開かれると痛さで泣き喚くしか無かった。この痛みは恐らく体験しなければ分からないだろう。
例えるならば、切り口は火傷をしたときのようにヒリヒリと痛み、臓器を触られる感覚は身体の中を蜈蚣や蚯蚓が這いずり回るような不快感だった。
そして肋骨も折られて心臓が剥き出しになると今度は頭の方に来て、メスを入れられた。
やっと終わるのだと思ったが、頭はメスを入れられたあと頭蓋骨を割られ、脳を剥き出しにされただけだった。
激痛に耐えながら事の成り行きを待つしかない恐怖に耐えていると、歪な身体が視界に入ってきた。
腕と脚が繋ぎ合わされており、同様に心臓が見えているが肋骨は残されており、頭はノコギリで切られているのか綺麗に分けられて蓋ができるように用意されていた。
そして、私はやっと脳が取り外されて意識を失った。
これが最後だろうと思ったところで、子供の声が聞こえてきた。
「ここまで付き合ってくれてありがとう。もう、帰してあげたいんだけど残念ながらまだ終われないんだ」
そうか、実験は成功してしまったのか。
残念に思いながら視界が戻ると私は最悪な事に気付かされた。
まず視界はこれまでよりもはっきりと見えるようになり、顔の見分けがつくようになっていた。
どうやら、眼も換えられたようだ。腕も脚も身体のほとんどが別人になった時、この身体は自分だと言えるのだろうか?
私はこのちぐはぐの身体で思案してると周りから喜ぶ男達の声がする。
「今日から私の事を父だと思い、助けた恩を返しなさい」
無麻酔施術をした男が私に言ってきた。私の意思とは関係なく口から言葉が出てきた。
「機会をくれてありがとう」
この身体は子供なのに力が異様に出る薬物投与でもされていたのだろう。
周りの男達の顔が喜びから恐怖に変わる前に私は近くにあったメスで父と名乗る男を殺していた。
それから次々と研究者達を殺していく。
これまで、何もできないゴミだと思われていたから誰も危害を加えられると想定してなかったのだろう。
そうして10人程殺した所で私は撃たれた。
だが、それでもすぐには死なず研究所に火をつけた。火はすぐに燃え広がり、私はその中で燃えながら外に出ようとする研究者達を一人でも多く道連れにしようとしてもがき、阿鼻叫喚の中で命を終えた。
そこで声がする。
「これが本当の最後だよ。ごめんね」
そして目を開けるとトイレの側に戻っていた。
何日も過ごしたはずなのに時間は3分しか経っておらず、身体中に感じた痛みもなくて本当に夢だったんだと実感した所で目の前に子供が現れて言った。
「忘れないでね」
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