第22話 仮面教師の憂鬱 3.手前にあった強い力

     3.手前にあった強い力


「キミの場合、本当の自分を取りもどすのではなく、本当の自分が何か? という見極めをしないといけないだろうね。つまり自分で自分のことが分かっていないから、偽ったり、作ったりしないといけない」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「エッチしてみればいい」

「……え?」

「本当に気持ちのいいエッチのときは、何も考えられず、欲望に身を委ねるだろう。逆にいえば、そうして気を使わない相手とのエッチで、自分がどういう人間か、知ることだ」


「キミは周りを見下す傾向がある。しかも、そんな見下している相手と友達になろうとする。なぜなら、そうするのが自然で、他の人がそうしするからだ。でも、見下す相手にそれをみせてしまえば、嫌われるのが必然だ。だから偽る。そうやって偽りを重ねた結果、自分が見えなくなった……:

 私も驚く。概ね、その通りだった。

「憧れや打算ではなく、本当の恋をすることだ。対等の相手と気をつかわないエッチをしてみろ。素直に自分がだせるようになるはずだ」

 そう、本当の自分をだせる相手……。「ねぇ、私とエッチしない?」

 そういう自分に、自分でも驚く。でも、自分でもそれが自然で、素直な気持ちだと思った。私はショタではないし、彼と恋愛しよう……とは思っていない。母性でそう感じたのでもなかった。

 彼とエッチをすれは本当の自分がみつかる、そう思ったのだ。

 彼もびっくりしたようだけれど「オレは構わないが、いいのか?」

 私は答える代わりに、腰をかがめて彼の唇に、そっと自分の唇を重ねた。


 私の部屋――。

 ポスターやオブジェを飾ることもなく、雑多な、ずぼらさを垣間見せるような部屋だ。クローゼットから服がはみだし、本棚も並べるのではなく、積んだだけ。机の上にも荷物が積まれ、勉強するようなスペースはない。

 でも、そんな部屋を見られても、私は平気だ。どうせ、彼には見透かされていると思うから。

 私がヒザ立ちすると、ちょうど顔の高さが合う。真正面からみると、まだ幼さがのこるし、まるで自分の子供……というと言い過ぎか? でも、こんな小さいこと本当にエッチできるかしら……?

 でも、彼の目は真剣で、まるで大人のそれだ、私はこの人の子供を、本気で欲しい……そう思った。


 彼ともう一度、唇を重ねた。

 キスは何度かしたこともあった。周りに彼氏ができて、私も欲しくなった。自分のステータスを上げてくれるアイテム、そんな打算的な考えで、彼氏をつくったこともある。

 でも身体をゆるしたくはなかった。がっつく中学生とするなんて、それこそ気持ち悪かった。

 好きでもなかったし、見栄えで選んだから中身はすかすかで、そんな相手をつなぎ留めておくために、仕方なくキスをしていた。

 でも彼とのキスはちがう。全身がしびれるような、身体の奥底から興奮する自分がいた。

 私は自ら服をぬぐと、下着姿になって彼をベッドに誘う。


 横になってしまえば、身長差なんて気にならない。彼は私の上になって、キスをしながら左の膨らみに手を這わす。私は自ら背中に手をまわし、ホックを外して邪魔な布をとりさった。

 彼は優しく、そのRの部分に手を這わす。まるでろくろの上に乗せた泥を成型するように、Rを描く部分を手の平で、その先端にある突起を指で、丁寧で静かに刺激を加えてくれる。

 まるで時まで解けていくようだ……。

 柔らかくて、引っかかりすらない指の腹は、まるで水晶を磨くように、私の全身を研磨してくれる。

 私の硬かった心と身体を、彼が融かしていく……。


 胸を……舐められている。彼の舌が這っていくのが、歯ではなく、唇で噛んでくるのが気持ちいい。

 私はもう、全身が敏感となっていた。彼の肌は吸い付くようで、それが私のお腹の上に乗っており、まるで全身が私と一体化しているような、そんな感覚にすら陥っていた。

 彼の手が、私の下着の上を、私のそこの形を確かめるように、ゆっくりと這う。私は自ら、下着を下ろして生まれたままの姿となった。

 彼はまるで私のそこに生えた毛すら弄ぶよう、五本の指が縦横に伸びる。閉じそうになる股を、私はしっかりと開いて、彼にそこへ来るよう促す。

 私はここにいる……速く来て。


 彼は入ってきた。でも、勿論小さくて、彼が痛みすら感じることはない。でも、彼とつながっている……そう感じるだけで私は幸せだった。

 彼は腰を動かしてくる。奥までとどく……なんて期待していないし、私の指よりは太いぐらいのそれが、健気に出し入れされるのが、私にとって重要だった。

 私の頭の中は、空っぽだった。彼が突くと、まるで私の太ももからお尻辺りの肌に彼の腰が、吸盤でもあるようにぴたっとくっつき、離れることを私は惜しんでいるかのようだ……。

 私はもう、頭の中が真っ白だった。飾ろうなんて考えてすらいない。空っぽの頭には、たった一つ、私はこれだけを考えていた。

 彼の子供が欲しい……。


 私はそれ以来、彼と会うことはなかった。

 世間体? 多分、ちがう。私は彼の前にいると、素直になれる。でも、彼はどうなんだろう……と考えた。

 八歳も年上の、女子高生とエッチをして、彼は気持ちよかっただろうか?

 自分を偽ることがなくなった以上、私は自分の脚で、歩いていかなければ……そう思った。

 私は彼のことが好きだから、彼と離れた。

 でも、それからの私はもう一度、仮面をかぶった。

 それ以外、自分の姿を想像できなかったから。彼以上に好きになる人がいなかったから。

 彼と関わったからか、私はいつしか教師を目指していた。

 まさか、高校で彼と再会するとも思わずに……。

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青い春は、科を学んで、物の理を知る イカ奇想 @aholic

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