第7話

雪代さんを起こす!?


私が!?




「いやいやいや、そんな大それたことっっ」



「大それた……??」




ハイネママが首を傾げる。



それに




「雪代さんはハイネママに起こされた方が嬉しいと思うよ?」




雪代さん、ハイネママが大好きだもの。



朝起きた時に、一番に大好きな人の顔が見れたらそれだけで今日1日が幸せ。




「それならなおのこと、ひなの方が適任じゃない」




パンっと手を叩いて、"ね?"とハイネママが笑う。




「いやいやいや、そんなわけ」



「それに」



「ん?」



「あたしは無理だわ……」




オェエ……としゃがみこむハイネママ。



悪阻!?



そういえば、ここまで御飯の炊けた匂いと味噌汁の匂いが漂ってくる。




「大丈夫!?」




あたしもしゃがんでハイネママの背中を擦る。



顔色が悪い……。



こんな小さな体に、1つの命が宿っているのだ。



無理は禁物、無理は禁物!!




「……大丈…夫」



「大丈夫じゃないよね。立てる?」




とりあえず目の前の部屋へ。




「ごめんねー」



「なんで謝るの?」



「ありがとー」



「うん」




襖を開けると、まだ気持ち良さそうに八千流ちゃんとハイドくんが寝てる。



ハイネママは自分の布団を起きた時に片付けていたから、もう一度敷いて寝かす。



ここまでは食べ物の匂いも届かない。



少し楽になったみたいで、顔色も良くなってきた。




ホッ、良かった。




「ごめんね、ハイネママ」



「ひな?」



「ハイネママ、体調が悪いのに、ハイネママが行けばいいなんて言って……」




体調が悪いのにも気付けないで……。



ハイネママも赤ちゃんも守るって誓ったのに……。




「ひ」




パァーーンッ!!




「!?」




私は自分の頬を両手で叩いた。




「ちょっ、ひなっ」



「任せて、ハイネママ!!」



「へ?」




立ち上がり、拳を握る。



そしてハイネママを見て頷いた。




「私、絶対に雪代さんを起こしてくるっ」



「ひなっ。そんなに力むほどのことじゃ…」



「いってくるね!!」



「ひなーっ」




ハイネママの激励を背に、私は部屋を飛び出した。









ハイネside




「ふふ。すくすく成長中……か」



「いちゅごはたまに、すっっぱいのです」



「え?」



「わかります」



「ねぇ、いっつも思うんだけど、アンタ達の寝言ってなんで食べ物のことばかりなの?」

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